近鉄奈良駅から東向商店街を抜けて三条通を横切り、もちいどの商店街へ。アーケードのある長い商店街は、奈良らしい和菓子やお土産物を売る老舗、新しい飲食店や雑貨屋があって、奈良を訪れた国内外の観光客がぶらぶら散策し、いつもにぎわっています。

 商店街から路地を入った所にある小さなお店が「奈良の小さなクッキー店 tic tack(チクタク)」。駐車場の奥の民家に、さりげなく置かれた看板が目印です。入り口の手前には、緑や花がいっぱいの小さな庭も。お店に入る前から、ほっこり、心が和みます。

左:木造の町家の一角にある焼き菓子のお店。
右:こちらがお店への入り口。

 「このあたりは、昔、色街で、この建物は置屋さんだったそうです」と、店主・松島伊久枝さん。お店があるのは、木造の町家を使ったギャラリー&ショップ「Ivory(アイボリー)」内。一角には、昔のままのかまどや五右衛門風呂も残されています。

左:昔のままのタイル貼りの流しやかまど。この向こうが「Ivory」。
右:これはなに? とよく見たら……五右衛門風呂!

 松島さんが作ったクッキーやスコーンなどが可愛くラッピングされて並ぶ小さなお店には、3席だけれど、イートインできるカフェコーナーもあり、まさに、お菓子好きの隠れ家。

左:卵や乳製品を使わない焼き菓子は棚の左側に並ぶ。
右:やさしい笑顔が魅力的な松島伊久枝さん。

 奈良県天理市に生まれ、京都の大学に通った松島さん。京都のおいしいお店を食べ歩くうちに、自分でパンやケーキを作りたいと思うようになったのだそう。卒業して奈良のパン屋さんに勤め、ケーキ作りを担当します。「そこがアレルギー対応のお菓子の注文を受けていたんです。自分がお店を持ったら、保存料を使わず、毎日食べられるお菓子を作りたい。特に、卵や乳製品を使わないお菓子を作り、アレルギーの方や子供さんに食べてもらいたいと思うようになりました」。

 2010年、もちいどの商店街のチャレンジ・ショップ「夢CUBE(キューブ)」で開業。3年の期限で、今の場所に移転しました。

2015.06.14(日)
文・撮影=そおだよおこ