ベトナムNo.1ホテルを目指して進行中
いよいよ客室へ。廊下はいたってシンプルノーマルなつくりだが、扉を開けるとおおっ! の凝りよう。天井のスタッコ(化粧漆喰)、金色をふんだんに使ったモザイク壁画あり、トリミングにも金銀を使い、とってもグラマラス。ツインシンクの洗面スペースも床面モザイクに加えてロココ的調度品と、濃密だ。書き出していくと何やら悪趣味に感じるかもしれないが、これが見事うまく収まっているのがさすが。
天井はさほど高いわけではないが、ジュニアスイートで約63平米。ゆったりとした空間と色使いの妙で、他にはないゴージャスでヒップな雰囲気に仕上がっているのだ。
右:アメニティはスイートがエルメスで、デラックスルームがショパール。やはり高級志向であります。
「家具やリネン類はすべてイタリア製。超一流のものを知っているゲストにかなうものを使っています。そして、これらはすべてビル内にあるブティックで購入できる仕組みなのです。コンプレックスビルの強みを生かして、いままでベトナムになかったイタリアの高級インテリアブランドのショップが3フロアにわたって用意されています」とジェネラル・マネージャーのハーバート・ロービヒラー=ピヒラー氏。
彼はシャングリ・ラやラッフルズなどでもジェネラル・マネージャーとして敏腕ぶりを発揮した人。アジアのホテルサービスをよく知るオーストリア人だ。
「独立系のホテルなので、オーナーの判断も早く、デスクワークに振り回されないで済みます。その分ゲストと直接話をしたり、ときには食事をしたり、ダイレクトな意見を聞いたり、反応を知ることができます。ホテルは生き物ですから、こうした時間がとても重要なのです」
オーナーは香港人とベトナム人夫妻によるベトナム企業だという。「ベトナム一のホテルをつくりたい」「グローバルスタンダードの超一流ホテルを目指す」がポリシーなのだとか。オーナー夫妻が最も好きなホテルはパリのリッツらしいが、ただ真似をするだけでは本家にはかなわないし、コピーしかできない。そこで生まれたこのホテルは、その濃密さだけを取り入れ、現代風に仕立てたということらしい。
2015.05.26(火)
文=大沢さつき
撮影=杉山拓也、大沢さつき