ベトナムNo.1ホテルを目指して進行中

客室数は286室で内62がスイート。スイートにはカテゴリーが12あるが、こちらはジュニアスイート。幾つかのスイートを見たが、このジュニアスイートが最もグラマラスな雰囲気だった。これより上のカテゴリーは、もう少しシックな印象。色使いであまり冒険せずに豪華さを演出している感じだ。
ひとつひとつの調度品の装飾性を考えると、かなり高度なコーディネイト力が必要とされる。客室内もそうだが、照明を落としめにして使うと落ち着いた雰囲気が増して、より心地よいように思う。

 いよいよ客室へ。廊下はいたってシンプルノーマルなつくりだが、扉を開けるとおおっ! の凝りよう。天井のスタッコ(化粧漆喰)、金色をふんだんに使ったモザイク壁画あり、トリミングにも金銀を使い、とってもグラマラス。ツインシンクの洗面スペースも床面モザイクに加えてロココ的調度品と、濃密だ。書き出していくと何やら悪趣味に感じるかもしれないが、これが見事うまく収まっているのがさすが。

 天井はさほど高いわけではないが、ジュニアスイートで約63平米。ゆったりとした空間と色使いの妙で、他にはないゴージャスでヒップな雰囲気に仕上がっているのだ。

左:洗面スペースからバスタブまで続くモザイク。3種類のモザイク柄を使い分け、3種類の大理石を使い分けた空間。
右:アメニティはスイートがエルメスで、デラックスルームがショパール。やはり高級志向であります。

 「家具やリネン類はすべてイタリア製。超一流のものを知っているゲストにかなうものを使っています。そして、これらはすべてビル内にあるブティックで購入できる仕組みなのです。コンプレックスビルの強みを生かして、いままでベトナムになかったイタリアの高級インテリアブランドのショップが3フロアにわたって用意されています」とジェネラル・マネージャーのハーバート・ロービヒラー=ピヒラー氏。

 彼はシャングリ・ラやラッフルズなどでもジェネラル・マネージャーとして敏腕ぶりを発揮した人。アジアのホテルサービスをよく知るオーストリア人だ。

 「独立系のホテルなので、オーナーの判断も早く、デスクワークに振り回されないで済みます。その分ゲストと直接話をしたり、ときには食事をしたり、ダイレクトな意見を聞いたり、反応を知ることができます。ホテルは生き物ですから、こうした時間がとても重要なのです」

ハネムーナー向けのロマンススイートのバスルーム。ベトナム人の大好きな赤で統一されたスイートなり。

 オーナーは香港人とベトナム人夫妻によるベトナム企業だという。「ベトナム一のホテルをつくりたい」「グローバルスタンダードの超一流ホテルを目指す」がポリシーなのだとか。オーナー夫妻が最も好きなホテルはパリのリッツらしいが、ただ真似をするだけでは本家にはかなわないし、コピーしかできない。そこで生まれたこのホテルは、その濃密さだけを取り入れ、現代風に仕立てたということらしい。

2015.05.26(火)
文=大沢さつき
撮影=杉山拓也、大沢さつき