でんぱ組.incを取り上げようと思ったら……

伊藤 同週にでんぱ組.incの「ちゅるりちゅるりら」がリリース。今、カップヌードルのCMに出演もしている話題のアイドルグループですね。このコラムで取り上げようと新曲の資料を頂こうと連絡をとったら、SEKAI NO OWARIの時と同じようにお断りされちゃいました。

山口 断られた理由が、「批評内容がネガティブな印象を受けました」だったそうで、心底驚きました。CREA WEBの読者に、いつの回のどの部分にネガティブさを感じたかアンケート取ってみたいですね。「ポジティブなことしか書かない」と方針を決めて始めたコラムなのにね?

伊藤 ですよね(笑)。正直「えぇ~まじっスか?」って感じ。ネガティブな表現は避けていたつもりだったんだけどなぁ。そもそも、個人的な視点ですが、グッドポイントがあると思えるものだけを選曲していたんですよ。でもまぁ、音楽誌のように、CDリリースのプロモーションツールのつもりで書いてるわけではないので、激褒めポイントが無いってだけで、ネガティブ批評と取られてしまったのかもしれませんねぇ。まぁ~別に良いですけど。

山口 文藝春秋は、そんなことではビクともしないらしく、どんどん書いてださいと言われました(笑)。

伊藤 OKです! でも、資料も無いし、これじゃ妄想分析もできないし、ってことでメーンに取り上げるのはやめました。それにしても、でんぱ組.incみたいにアングラさを前面に出し、インディーズからライブアイドルやってきて、「ネガティブ批評」とか一番気にしなさそうなところが、こういうこと言ってくるのが意外。彼女らの曲「でんでんぱっしょん」は、スゲー曲だと思ってリスペクトしてたんで、ちょっとテンション落ちました。でもまぁ、勢いのあるときは何かと慎重になるってことでしょうかね。

山口 サッカーに喩えるなら、レコード会社のプロモーターの役割はFWで、岡崎みたいにチャンスと見れば、得点のために頭からでもゴールに向かって突っ込んでいくのかと思いますが、メンバーがFWみたいなプロジェクトだと役割が違うんですかね。

伊藤 なるほど……。って、ちょいちょい出てくるサッカーの喩えが、僕にはムズい(笑)。アイドル周りに詳しい人に訊いてみると、メジャーデビューのタイミングで一般受けするビジュアルの可愛いメンバーが加入したと言われているみたいですし。まぁ大きくなるにつれて、色々な人たちが手を尽くして彼女たちの“今”がある感じなんじゃないですか。

山口 なるほどね。ちなみに、Wikipediaを見てみたら、明らかに「大人の手」でエディットされてましたね。Wikipediaというのは、元来はインターネットユーザーの「集合知」による辞書なので、たくさんの人の意見を集約して作っていく典型的なUGM(ユーザージェネレイテッドメディア)なのですけど、でんぱ組.incの項目は、公式情報の羅列でした。そんなところからも、でんぱ組.incにおいて求められるレコード会社の役割は、FW岡崎ではなく、ディフェンダーで、チーム全体のバランスを取る今野みたいなポジションなのかなと感じました。

伊藤 前半16分でスライディングタックルしてPKとられるなよ! 的な。

山口 コロンビア戦ね。あれは、日本代表不振の象徴的なシーンでしたね、ってそれは優しい日本人としては言わないお約束でしょ(笑)。ネガティブな批評って言われるよ(笑)。

伊藤 ムズい(笑)。

山口哲一 (やまぐち のりかず)
音楽プロデューサー、コンテンツビジネス・エバンジェリスト。(株)バグ・コーポレーション代表取締役、「デジタルコンテンツ白書」(経産省監修)編集委員。プロデュースのテーマに、ソーシャルメディア活用、グローバルな視点、異業種コラボレーションを掲げて、音楽とITに関する実践的な研究を行っている。著書に『ソーシャルネットワーク革命がみるみるわかる本』(ダイヤモンド社)、『ソーシャル時代に音楽を“売る”7つの戦略』『プロ直伝! 職業作曲家への道』(リットーミュージック)がある。最新刊は『世界を変える80年代生まれの起業家 ~起業という選択~』(スペースシャワーネットワーク)。詳細プロフィールはこちら
Twitter@yamabug https://twitter.com/yamabug
ブログ「いまだタイトル決めれず」 http://yamabug.blogspot.jp/
作曲家育成セミナー「山口ゼミ」 http://www.tcpl.jp/openschool/yamaguchi.html
WEDGE Infinity連載「ビジネスパーソンのためのエンタメ業界入門」 http://wedge.ismedia.jp/category/entertainment

伊藤涼 (いとう りょう)
音楽プロデューサー、ソングライター。ジャニーズ・エンタテイメントで『青春アミーゴ』などのミリオンセラーをプロデュース、後にフリーランスに。ソングライターとして、乃木坂46『走れ!Bicycle』、AKB48『ここにいたこと』などの作品がある。作詞アナリスト、フードミュージックプロデューサーとしても活躍。論理的で明晰な分析力に注目。
マゴノダイマデ・プロダクション http://www.mago-dai.com/
ブログ「伊藤涼の音楽」 http://ameblo.jp/magodai/
伊藤涼が主宰する作詞研究室リリック・ラボ 
http://www.mago-dai.com/?m=201406

 

Column

来月、流行るJポップ チャート不毛時代のヒット曲羅針盤

音楽ビジネスとITに精通したプロデューサー・山口哲一。作詞アナリストとしても活躍する切れ者ソングライター・伊藤涼。ますます混迷深まるJポップの世界において、この2人の賢人が、デジタル技術と職人的な勘を組み合わせて近未来のヒット曲をずばり予見する!

2014.07.12(土)
文=山口哲一、伊藤涼