古代ローマ帝国の浴場設計士ルシウスが、現代日本の温泉にタイムスリップするコメディ漫画『テルマエ・ロマエ』で知られる漫画家・文筆家・画家のヤマザキマリさん。高校を中退してのイタリア留学、極貧、シングルマザー、そして挫折の日々を語ったNHK Eテレの番組は大きな反響を呼びました。今回、その内容を書籍化した『最後の講義 漫画家・文筆家・画家 ヤマザキマリ』より、一部を紹介します。(全3回の3回目最初から読む

 比較文学の研究者である夫に同行して家族で世界を転々とする中で、入浴への欲望が高まり「急に昭和のお風呂にローマ人が飛び出してくる」漫画のアイデアがひらめいたヤマザキさん。ついに『テルマエ・ロマエ』の連載が始まります。

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人生に大展開をもたらした『テルマエ・ロマエ』

 『テルマエ・ロマエ』は不定期連載で始まりました。ラテン語のタイトルも本当に適当ですよ。「ローマの風呂」ですからね。夫に「ローマの風呂ってラテン語で何て言うの?」と聞いたら、「テルマエ・ロマエ」と返ってきたので、それをそのままタイトルにつけたんです。

 それが今や、みなさんに「テルマエ」と言って通じるようになったのだからすごいことだと思います。あのような漫画がなぜあそこまでヒットしたのか、その理由は神のみぞ知るとしかいえませんが、とりあえず、ほかのわらじを履かなくても漫画だけで生きていける状況に至ったのは嬉しい顚末でした。

 そんな、人生に大展開をもたらした『テルマエ・ロマエ』だったのですが、ヒットを機にいろいろな問題が発生し、この連載を続けることに疲れてしまって6巻まで出してやめてしまいました。スピンオフをやってほしいと言われていたのですが、とてもそんな心境ではなく、体調までくずしてしまったので、しばらく『テルマエ』のことは考えたくないと思ったのです。

 それから10年たって、やっと『テルマエ・ロマエ』のスピンオフを描きたいという思いがわいてきました。10年の間にずいぶんいろいろな漫画を描いていましたけれど、自分の中に貯蓄されていたネタは大体作品に変えてきたこともあり、もうなんだかそこまで力んで漫画は描かなくてもいいかなあ、という気持ちになってきています。

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