帰る場所があることが、大きな安心感になっている

 俳優という仕事は、「からっぽ」の箱に中身を入れ続け、自分をブレンドしていく作業に似ていると岡田は言う。

「仕事に限らず、人生経験や人との出会いによって変わっていく価値観を、自分の中でメレンゲして、日々新しい自分に進化している──そんなイメージです。昔は背伸びして大人の役をやりたいと思っていた時期もありましたが、今の自分の経験と年齢でできる役を探し続けていきたいです」

 自分の中だけで終わらせず、相手役から“もらう”こともあるという。

「自分だけではできなかった芝居を、相手の方によって引き出してもらうこともあります。だから、僕も相手の方にあげられるものを、常に自分の中にしまっておくようにしています」

 私生活では昨年、俳優の高畑充希と結婚。家族が増えたことで、自由度が増したと話す。

「帰る場所があることで、心と体が軽くなったと感じて、大きな安心感になっています。恐れるものがなくなり、どこまでも自由に突き進めるような気持ちになりました」

 さまざまな人生経験を経て、俳優・岡田将生が巡り会った『アフター・ザ・クエイク』。彼はそのテーマを“揺れ”だと語る。

「最初はまったく“揺れ”がなかった小村が、感情と自分を動かしたことで、エピソードごとに登場人物の“揺れ”が大きくなって、最後に自分自身を取り戻しにいく。観る方によって受け取り方はいろいろあると思いますが、それぞれの答えを探しに、劇場に来ていただけたら嬉しいです」

おかだ・まさき 1989年生まれ、東京都出身。2006年デビュー。近年の主な映画出演作は、『アングリースクワッド 公務員と7人の詐欺師』(24年)、『ゆきてかへらぬ』(25年)など。11月21日には声優を務めた『果てしなきスカーレット』が公開予定。韓国ドラマ初出演となるDisney+オリジナル韓国ドラマ「殺し屋たちの店」シーズン2の配信も控える。

『アフター・ザ・クエイク』
監督:井上剛/原作:村上春樹『神の子どもたちはみな踊る』(新潮文庫刊)より/脚本:大江崇允/出演:岡田将生、鳴海唯、渡辺大知、佐藤浩市ほか/2025年/日本/132分/配給:ビターズ・エンド/公開中
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