自分の演じる人物が作品にどう作用していくのか

 8月に36歳になり、以前より自分の演技を俯瞰的に見られるようになったという岡田。

「基本的に役への向き合い方は20代のころと変わっていないと思っています。でも、自分の演じる人物が作品にどう作用していくかは、より考えるようになりました」

 そう答えながら、「そして確実に20代のころよりも俳優という仕事がより好きになった」と、笑顔を見せる。そして、この『アフター・ザ・クエイク』を俯瞰して、こう語った。

「村上さんの作品は余白が多いんです。だからタイミングや状況によって、作品のとらえ方もまったく違うものに見える。それだけに、やりがいも大きい。村上作品に一度参加させていただけた経験があるからこそ、それを余計に感じるようになりました」

『アフター・ザ・クエイク』は大きく4つのパートで構成されている。登場人物たちはそれぞれ孤独や恐怖を抱えながら、現実と幻想を彷徨う。感覚的で幻想的な世界は、観客の想像力をかき立てる。

「20代のころは役作りにも正解を求めて、思考も直線的だったと思います。でも正解なんてどこにもないんです。30代半ばを過ぎて、ようやくそう言い切れるようになってきて、本作のように正解を求めない作品にも出会えるようになった。これはありがたいことだと感謝しています。

 楽しみながらつくろうとしている監督やスタッフの方々と出会えたことや、現場でご一緒することは叶いませんでしたが、海岸で焚き火をする男を演じた堤真一さん、“かえるくん”と共演する佐藤浩市さんなど、素晴らしい先輩方と共演できたのも貴重な経験でした」

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