【WOMAN】
論理的ではなく、感情的でいい
それでも“ここ”にいる理由
東京で漫画家稼業を営むニコルソン女史の故郷は、宮城県の東南端にある海沿いのまち。母と祖母の暮らす家は、東日本大震災によって半壊した。サバイバル&レスキューな日々をなんとかやり過ごしたあと、母娘3代、実家再建プロジェクトが幕を開ける。
新築するほうが安いのに、被災地の建築制限にひっかかり、リフォームはOKで新築はNG。母のガン。祖母の認知症……。次々に立ちはだかる難問を前に、孫娘は一度は諦めようとする。奮起のきっかけは、純な瞳をした祖母のひとことだ。「お母さんは生まれ育った場所に戻ります」。
人々が日常生活の中で棚上げにしてきた問いを、突きつけてみせたのが先の震災だった。例えば――なぜ自分は、他の土地ではなく、“ここ”に住んでいるのか。明確な理由なんてないのかもしれない。でも、きっと自分なりの感情的な根拠はある。その「自分なり」を、自分なりに、見つめてみたくなる。
『ナガサレール イエタテール』 ニコ・ニコルソン
東日本大震災によって実家は半壊、津波に呑まれかけた母と祖母は九死に一生を得る。避難所暮らしを続けていたふたりと再会後、女3人が打ち立てた目標は、実家再建! デフォルメとリアル、コミカルとシリアスのバランスが絶妙な、新鋭エッセイ漫画家の長篇出世作。
太田出版 952円
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Column
男と女のマンガ道
男と女の間には、深くて暗い川のごとき断絶が横たわる。その距離を埋めるための最高のツールが、実はマンガ。話題のマンガを読んで、互いを理解しよう!
2014.07.03(木)
文=吉田大助