男女混合パフォーマンスグループ「AAA」のメンバーで、現在はソロアーティストとしても活動している與真司郎さん。
大の旅好きでもあり、世界各国を飛び回る日々を送っています。そんな與さんが、旅に出る理由とは――。
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ここではない、どこかへ。
子どもの頃から、世界は少しだけ窮屈だった。なぜなのか、はっきりわかるようになったのはずっとあとになってからだけれど、今思えば、性的マイノリティであることがその一因だったのだと思う。僕がゲイであるということは、ずっと誰にも話せずにいた。家族にも友人にも、芸能界に入ってからも。
10代でAAAというパフォーマンスグループでデビューして、気がつけば、表舞台に立つことが日常。ステージでは堂々とふるまっていても、心の奥では「知られてはいけない」という思いがどこかにあったんだと思う。そして20代に入った頃、自分の中に芽生えはじめていたのは、「日本では、このまま自分らしく生きるのは難しいのかもしれない」という感覚。なんとなく、海外に目が向くようになったのはその頃だった。

初めての渡航先は……
当時の僕は英語もろくに話せなかったし、海外に暮らした経験なんて皆無。でも、直感のようなものに従ってみた。自分でお金を出した旅行の初めての渡航先に選んだのは、ロサンゼルス。ひとりで飛行機に乗るのも初めてだったけれど、不安よりも「とにかく行ってみたい」という気持ちが勝っていた。
iPhoneもGoogle翻訳も今ほど普及しておらず、ChatGPTもない時代。今では当たり前になったUberだって存在していなかった。そんな不便さを全部抱えたまま、それでも行ってみようと思ったのは、自分の中で何かが動いていたからだと思う。
いざロサンゼルスの街を歩いてみると、驚くような光景に何度も出合った。同性同士のカップルが、ごく自然に手をつないで歩いている。しかも誰に見られることも、後ろ指をさされることもなく、まるで当たり前のように。その光景を目にしたときの衝撃ったら! 「こんなふうに生きてもいいんだ」というのかな。自分が探していた「どこか」は、もしかしたらこういう場所なのか。もっといろんな世界を見てみたい、そう思えば思うほど、やっぱり自分には海外という環境のほうが合っているのかもしれない、と感じるようになった。
2025.10.17(金)
文=大嶋律子