2023年7月26日、與真司郎さんは、約2,000人のファンに向かってこう語りだしました。
「さまざまな葛藤を乗り越え、今やっと、皆さんにこのことを打ち明ける決意ができました。それは僕がゲイであるということです」
多くのファンに支えられ、アーティストとしての活動を続けてきた與さんの、突然かつ衝撃的な告白に会場は凍りついたように静まり返りました。そして静寂の後に訪れたのは、彼の勇気あるカミングアウトを肯定する大きな声援と拍手でした。その後、與さんの人生になにが起きたか。率直に語ってもらいました。
カミングアウト後もかなり苦しんだ。でもやってよかった

――カミングアウトから2年。人生はどう変化しましたか?
與 正直に言うと、カミングアウト後もかなり苦しみました。多くのファンは温かく受け入れてくれたし、今も変わらず応援してくれています。LGBTQ+の方のファンも増えたし、悩みを相談してくれる方もいます。一方で、数少ないとはいえ、やはりバックラッシュ(反動)もありました。それでも、批判や誹謗中傷の声は、覚悟していたよりも少なかったと思います。ただどんなに少なくても、たとえ1%の意見だとしても傷つく、傷つけられる。
僕もよくなかったんですけど、当初はSNSとかエゴサして、批判的な意見を自分から見に行っていたんです。自傷行為みたいなもので、それを見て落ち込んで、カミングアウトなんてしないほうがよかったんじゃないかって思ったり。ストレスから帯状疱疹になり、肌がボロボロになったこともあります。1年くらい、どうやって生きていけばいいんだろうと悩む時期が続いていました。
――その苦しみからはどうやって抜け出したんですか?
與 旅に出ることにしました。当時はLAで生活をしていて、とても快適だったんです。僕のことをわかってくれている仲間、友人がいる安心できる場所。ただ閉塞感みたいなものを感じるようになって。それで一回LAを離れてみようと思って去年の7月に2カ月の休みをとって旅に出ることにしたんです。
最初はほぼヨーロッパにいたんですけど、そこからは旅にハマって、最近はいろいろな国に出かけて、ノマドのようなライフスタイルになっています。
2025.09.18(木)
文=川上康介
写真=佐藤 亘
スタイリング=SUGI
ヘアメイク=佐藤真希
CREA 2025年秋号
※この記事のデータは雑誌発売時のものであり、現在では異なる場合があります。