YouTube未公開の新レシピ全80品を収録

 大きな転機となったのが2020年。コロナ禍で店の営業を自粛していた期間に、家にこもる日々を過ごすお客さんたちのことを思って、YouTubeチャンネルを開設します。

「僕自身も店を開けられない。でもお客さんたちも、毎日のごはん作りに困っているはず。それなら、スーパーで揃う食材で簡単に作れるレシピを紹介しようと始めました」

 2020年4月からほぼ毎日配信されたレシピ動画は、今では1000品を超えるまでに。プロの技を惜しげもなく披露する内容も話題を呼び、現在フォロワー数が約54万人を超える人気チャンネルとなっています。

 しかし本書では、「普通の家庭で毎日くり返し作れること」に徹底的にこだわり、あえてYouTube未公開の新レシピに挑戦。肉じゃがや豚のしょうが焼きなど定番の和食から、中華、洋風おかず、アペロ、おつまみ、ごはん、麺、スイーツまで、「家庭料理になんの偏見もないからこそ、自由にいろんなものを作れた」という全80品を網羅しています。

スーパーで揃う食材&冷凍食品もOKの気軽な家庭料理

 メニューを決めてからさらに半年をかけ、手軽に作れるようスタッフと何度も試作を重ねた「究極の家庭料理」は、どのレシピもシンプルで、難しいテクニックは一切不要。何よりこだわったのは、食材も調味料もすべてスーパーで揃うものだけを使うことでした。

「手に入らない材料がひとつでもあると作らないので、必ずスーパーで手に入るものを使いました。出来合いのソースや冷凍食品も活用しています。特別な道具ももちろん必要ありません。実際、撮影ではほとんどの料理をカセットコンロで作ったんですよ」

 それでも“究極”と謳うのは、使う食材はおなじみでも、作り方はシンプルでも、一度で味がしっかり決まる“ミクニ流”のコツが随所に盛り込まれているから。

「忙しいとフライパンが温まるのを待てないですよね。だから“材料を入れてから火をつける”というテクニックを取り入れています。盛り付けは高さを出すだけで見栄えがぐんとよくなる。味のアクセントに、白と黒のコショウを使い分けるのもポイントです」

2025.10.04(土)
取材・文=田辺千菊(Choki!)
写真=釜谷洋史