
日本を代表するフランス料理の巨匠・三國清三シェフが、最新レシピ本『ザ・シェフ三國の究極家庭おかず』(主婦の友社)を9月5日に刊行。これまで数々のレシピ本を手がけてきた三國シェフにとって、「日本の家庭料理」に挑戦するのは今回が初となります。
70代を迎え、“人生最終章のスタート”と自ら語る今、なぜフランス料理ではなく家庭料理なのか――その思いを語っていただきました。
家庭料理の原点はスイスでの“主婦”経験

「家庭料理」がテーマの本書ですが、実は家庭料理を知らずに育ったという三國シェフ。幼少期から両親が共働きで、毎朝3時に家を出ていた母親が用意してくれたお弁当には、白飯だけが詰まっていたそう。「それでも感謝しかなかった」と振り返る一方で、「家庭料理の思い出がない」とも明かします。
そんなシェフが挑む“家庭料理”の原点は、20代の頃、スイス・ジュネーブの日本大使館の料理長を務めた経験にありました。
「大使館と聞くと、ごちそうばかりのイメージがあるかも知れませんが、ふだんの食事は和食の家庭料理が中心。朝昼晩の食事に夜食を加えた1日4食を、毎日作り続けました。誰にも教わらずに作っていましたが、とてもおいしいと評判で、2年の任期が4年に延びたほどです。ある意味、スイスで初めて“主婦”を経験したわけです」
家庭料理は、同じ家族が毎日食べるもの。飽きさせない工夫をすることの大変さを、当時の経験から学んだといいます。
2025.10.04(土)
取材・文=田辺千菊(Choki!)
写真=釜谷洋史