インドのデモプラントでの成功

“ライフサイクリング”の概念をもとに、廃棄物が新たな製品として異なる産業で活用されることで、より経済的影響力をもち、より柔軟でより持続可能な循環型社会と循環経済のビジネスモデル構築を目指すミランダとヤオ。彼女たちはその成果を世界に示すための第一歩として近年、インド西海岸の都市、スーラトの郊外にわずか6カ月で新しいデモプラントを誕生させた。
地元の化学メーカーと提携し、このデモプラントは2024年に100時間連続稼働を達成。使用済みポリエチレンをトン単位で高品質材料に転換することに成功。そして、プラスチック転換プロセスが現代の産業環境において、完全自動化の下に24時間365日連続稼働が可能であることを証明するデモプラントを世に送り出した。
「年間70トンの処理能力をもつこのプラントにより、自社開発の独自プロセスがスケールアップした場合でも安全かつ信頼できるものであることを実証し、高純度製品のトン単位のサンプルを製造することに成功したのです」
先に述べたが、ミランダはポリエチレンを分解し、価値ある化学物質へ転換するプロジェクトで2019年にすでにロレックス賞を受賞している。ロレックスの取り組み「ロレックス パーペチュアル プラネット イニシアチヴ」による経済的な支援とプロジェクトに対する信頼はインドのプラント建設にあたっても大きな支えとなり、唯一無二のパートナーシップであったと語っている。

「ロレックスの支援について、よく『プラスチックのサプライチェーンに直接関わっていない企業がどのようにこの分野に貢献できるでしょうか?』と聞かれるのですが、私の想いの中では、ラグジュアリーブランドが最も得意としていることの一つは、『何がトレンドなのか』、『この時代にとって何が重要なのか?』といった価値観をより明確に定義することです。そして、それらの問いに対して世界的な影響力をもたせ、より社会的に際だたせることができるのです」
難題に挑戦する彼女に希望を与えてくれる存在

最後に彼女たちが推進するプロジェクトにおいて、もう一つ注目すべき重要な点は、従来のプラスチック廃棄物転換のプロセスと比較して最大91%の二酸化炭素排出量を削減可能にし、さらに化石燃料由来プラスチックと同等の品質と低コストを維持することが可能だということだ。
この革新に満ちたプロセスの堅固な成功においてNovoloopはさらなる生産拡大計画を進めている。2030年までに年間最大17万5000トンのプラスチック廃棄物を処理し、年間最大80万トンのCO2を削減することを目標に掲げており、さらに先を見据え、100年後には人類の物質生産は完全に循環型になるという強い信念をもち続ける。
「私には今1歳の息子がいますが、毎日彼のためにより良い未来を作りたいと思っています。地球と未来を生きる世代のために、そうである必要があるのです」とミランダは語る。
そして彼女は起業家・化学者としてだけでなく、システムの制度設計や啓発活動にも取り組み、技術と社会のつながりを積極的に図っている。

「私たちはすべてが可能だと信じなければなりません。難しいことですが、地球のより良い未来のためにたゆまぬ努力をしている人々――彼らは登山家、自然保護活動家、起業家やアーティストなど様々な分野で活動しています――彼らの存在が希望を与えてくれるのです。そしてその多くがロレックスがサポートする数々のプロジェクトにつながるメンバーの一員であることが私にさらなる希望を与えてくれるのです。そして、何よりも、未来は私たちの手の中にあるという強い信念が、今もつねに私の中にある想いを新たにしてくれるのです」
ロレックス パーペチュアル プラネット イニシアチヴ
https://www.rolex.com/ja/perpetual-initiatives/perpetual-planet
ミランダ・ワンのプロジェクト

2025.10.03(金)
文=朝岡久美子