まだまだ成長していける作品
――実際、全国を回られて受け取るものも大きいですか?
キャラバンで回っていて一番感じることは、映画は観てもらって初めて完成するものですけど、『宝島』に関しては、観てもらった後もなお成長しているように感じるんです。観客の皆さんが、物語の当事者になるんですよね。グスクの目線を通して、「あ、これは私の話だったのか。私が今、命のバトンを渡されてる」となるというか。
だから皆さんの中でストーリーが生まれるんですよ。そういう意味で言うと、『宝島2』とでもいうのかな。「託されたこの想いを、未来にどうつなげる?」みたいな。映画という枠を少し超えた存在になってくれているような気がするし、それこそが映画が存在している意義だと思うし。この先、まだまだずっと成長していける作品じゃないか、と思っています。

――取材を通しても妻夫木さんにとって、『宝島』が単なる映画という位置づけではないことを感じます。この映画を通して、妻夫木さんは何を表現したかったのか――今はどのように感じていますか?
何だろうなあ……。完成した作品を観て思ったことは、やっぱり命のバトンの話だなと格別に感じました。命ってつながっていくものなんだな、という。この映画を通して、僕は死生観みたいなものが少し変わったんです。死って終わりを意味するものだと思っていたのですが、想いは確実につながっていくわけで。
「永眠」という言葉があるけど、文字通り、ただ眠っているだけでずっとここ(心)の中で生きているんじゃないかな、という。死という世界に行った……すごく極端に言えば、東京から大阪に行った、みたいな感覚に近いかもしれません。だから死後の世界というところに行っただけで、また会いに行ける。そんなイメージに変わったことで、死というものに対してあまりネガティブな感覚がなくなったんですよね。
命はずっとつながっていって、死してもなお一緒にいる。そういう想いに僕らは知らない間に支えられて、今この瞬間を生きているんだな、と。だからこそ、今度は僕たちが次の世代にバトンをどう渡していけるか。そこにつながっていくのかなって、そんな感じがしています。
2025.09.20(土)
取材・文=赤山恭子
撮影=山元茂樹
ヘアメイク=大上あづさ
スタイリスト=カワサキタカフミ