「乾杯」で心が一つになる
――ありがとうございました。キャラバンを回っていらして、妻夫木さんが思い出す「一皿」や「一杯」などはありますか?
「一杯」と言われると……もう仕事終わりのビールしか出てこない(笑)。キャラバンで伺ったその土地土地で乾杯するのは本当に今楽しいです。心が一つになるって、やっぱりうれしい瞬間なんですよね。その土地の映画の担当の方、映画館の人たち、皆さんと乾杯するとなお一層一体感が増して、まるで家族のようになれる瞬間があったりするので、そういうのがうれしいんです。
映画というものをきっかけに、また一つつながりが増えて、大きな輪になりつつあると実感します。だから、お酒は本当にすごいなと思います。もちろん、お酒が飲めない人はノンアルでいいんです。最初の一杯目の「乾杯~!」がいいなと思っています。

――そうやって妻夫木さんが現地で酌み交わすことで、皆さんの士気も上がるような感じもします。
意図的に僕がやっていることではないんですけどね(笑)。ごはんを食べるってすごく人間にとって当たり前の行為なんだけど、当たり前にやることだからこそ、一緒にやると、すごく特別な瞬間になりますよね。知り合いだった人が友達に昇華するとか、急に距離が縮まることがありますよね。
人間の三大欲求と呼ばれるものがありますけど、そのなかで誰かと一緒に気軽にできるものと言えば、やっぱり食べることじゃないですか。どこの国に行ったって乾杯さえすれば、なんか仲良くなれる気がしますしね。
忘れられない故郷の味
――ちなみに、「一杯」のおともとして、忘れられない「一皿」の味もありますか?
「一皿」かあ、選ぶのが難しいなあ~……! 僕にとって料理は人生を振り返らせてくれる、その時代にパンッと瞬間的に戻してくれるものだと思っているんです。それで言うと、福岡で久しぶりに「がめ煮」を食べたときに、子供の頃の記憶や両親とか、いろいろな良い思い出がファンッと蘇りました。僕は生まれが福岡で、がめ煮はいわゆる筑前煮のことなんですけど、福岡の人たちはそう呼んでいて。東京で食べる筑前煮の味とは、やっぱりちょっと違うんですよね。九州の醤油は結構濃口で、甘めなので。僕にとって、忘れられない味ですね。
》【前篇】「本当に瑛太で良かった、と思うのは…」妻夫木聡が明かした、20年来の盟友・永山瑛太への“感謝”《映画『宝島』で共演》
『宝島』2025年9月19日(金)より全国公開
https://www.takarajima-movie.jp/
出演:妻夫木聡、広瀬すず、窪田正孝、永山瑛太、塚本晋也、中村蒼、瀧内公美、栄莉弥、尚玄、ピエール瀧、木幡竜、奥野瑛太、村田秀亮、デリック・ドーバー
監督:大友啓史 原作:真藤順丈『宝島』(講談社文庫)
配給:東映/ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント
©真藤順丈/講談社 ©2025「宝島」製作委員会

2025.09.20(土)
取材・文=赤山恭子
撮影=山元茂樹
ヘアメイク=大上あづさ
スタイリスト=カワサキタカフミ