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 最新主演映画『宝島』にて、主人公の刑事・グスクを演じた妻夫木聡さん。インタビュー後篇では、本作の宣伝アンバサダーも担っている妻夫木さんの想いや、全国キャラバンで駆け抜ける中、印象的だった「一杯」や「一皿」のほっこりするような思い出まで語っていただいた。

【前篇】「本当に瑛太で良かった、と思うのは…」妻夫木聡が明かした、20年来の盟友・永山瑛太への“感謝”《映画『宝島』で共演》

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――妻夫木さんは現在、映画『宝島』の「宣伝アンバサダー」として全国を巡るキャラバンをされていますよね。元々『ウォーターボーイズ』(2001年)での経験から、妻夫木さん自ら発案されたと伺いました。なぜこの形を取られたんでしょうか?

 『宝島』を沖縄で撮影しているときに、「この先映画が完成して宣伝する段階になったら、どうするんだろう?」とふと思ったんです。この映画に関しては、よくあるようにバラエティ番組に出て最後の1~2分間で告知することに、どうしても違和感があったというか。もちろん、より多くの方々に知ってもらえる機会が増えるわけだから、その宣伝方法が作品の認知度を上げるために必要で当たり前なことだと思っています。それでも、この作品とはどうしてもリンクしなかったんです。

 そもそも、沖縄の方々の想い、(大友)監督に「心中する」と言った僕自身の覚悟、コザとの縁を運命的に感じてグスクを演じたこと……いろいろなものを含めて、もっと向き合うべき何かがあるんじゃないかなと思ったときに、『ウォーターボーイズ』が出てきたんですよね。

「その土地の映画」になる感覚

――『ウォーターボーイズ』は当初、劇場公開数も少ないところから、全国キャンペーンを経て、結果大ヒットとなりましたよね。

 そうなんです。その頃の日本映画界は今みたいにメジャー映画が次々と作られて何本も公開される、という時代ではなかったんですよね。僕も全然認知されていない駆け出しの時期でしたが、「お客さんに届け!」という想いで各地を回りながら、キャンペーンに臨んでいました。そこで観てくれたお客さんが、『ウォーターボーイズ』をすごく愛してくれていることが、やっぱり伝わってきたんですよね。何だか「その土地の映画」になっているような感覚があったんです。

 『宝島』もこれなんじゃないかな、と思って。近年はキャンペーンをやることが少なくなってきているけれど、もう1回、改めてやるべきなんじゃないかなと。そう考えて、「お金がかかるかもしれないけど、やらせてもらえませんか」と投げかけたのが始まりでした。

2025.09.20(土)
取材・文=赤山恭子
撮影=山元茂樹
ヘアメイク=大上あづさ
スタイリスト=カワサキタカフミ