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盟友・永山瑛太への感謝

――オンちゃんとして、ただいてくれたんですね。

 そう、存在してくれた。説明するのがすっごい難しいんだけど……(苦笑)。いい意味で余計なことをしないでくれた、と言うんでしょうか。瑛太はね、日常でいてくれるんです。あれだけカリスマ性がある役だと、多くの役者はかっこよく演じようとするはずなんですね。彼はそういうのを捨てて、ちゃんとオンちゃんでいてくれるんです。本当に、なかなかできないことだから、それは感謝でした。

 オンちゃんも、やっぱり一人の人間なんですよ。リーダーだからかっこいいことを言った、印象的なことをやろうとしてくれた、とかじゃなくて。結果として彼を特別な人間にしているのは僕たちなので。

――オンちゃんは行方がわからなくなりますし、グスクと非常にドラマティックなお芝居もありますよね。物語の根幹となるところなので表現は難しいですが……。

 そうそう、(ネタバレになるから)書けないけどね(笑)! 観てくださった方には絶対にわかる“とある”シーンでは、台本上では特に何も指示が書いていなかったんです。でも、そこでも何気ない日常にしてくれる芝居をしてくれて。ありがちな「ザ・映画」的なことを一切せずにいてくれたんです。

 そのシーンは撮影が全体の半分くらい進んだときに撮ったんですけど、終わった後に彼が「いや、もうブッキー(妻夫木さん)で本当に良かったと思った。グスクだった、本当に良かった」と言ってくれて。うれしかったですね。

 僕は逆に、「瑛太がオンちゃんとしていてくれたからできたんだよ」とは思ったんだけど。やっぱり瑛太も僕を信じて、ああいう芝居をやってくれたんだろうなって。お互い、ずっといろいろな作品で一緒に戦ってきたからこそ、信頼し合えているからこそ、やれたことだと思っています。

本気か本気じゃないかは、映像に出るもの

――20代からこれまで、ともに着実にキャリアを重ねてきたお二人だからこその喜びもあるんでしょうか。

 それはあまり考えたことがなかったなあ……。何だろうなあ……永山瑛太という存在が求められるのは、当たり前だと思っているのかもしれません。だって、あれだけの役者ですから評価されないわけがないし、「使いたい」と思われるでしょ、って。それぐらいのことを彼はやってきているし、僕もそういう覚悟でいつも作品とは向き合っているつもりです。そう求められるように頑張ってはいます。それから、彼は作品への向き合い方がやっぱり本気だからさ。本気か本気じゃないかっていうのは、映像に出るものだと思うんです。

【後篇】「乾杯で心が一つになるって、やっぱりうれしいです」妻夫木聡が語った、映画『宝島』全国キャラバンの裏側

『宝島』2025年9月19日(金)より全国公開

https://www.takarajima-movie.jp/
出演:妻夫木聡、広瀬すず、窪田正孝、永山瑛太、塚本晋也、中村蒼、瀧内公美、栄莉弥、尚玄、ピエール瀧、木幡竜、奥野瑛太、村田秀亮、デリック・ドーバー
監督:大友啓史 原作:真藤順丈『宝島』(講談社文庫)
配給:東映/ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント
©真藤順丈/講談社 ©2025「宝島」製作委員会

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2025.09.20(土)
取材・文=赤山恭子
撮影=山元茂樹
ヘアメイク=大上あづさ
スタイリスト=カワサキタカフミ