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2回の撮影延期を経て

――コロナ禍の影響で、撮影が2回延期になったそうですね。

 そうなんです。この映画は2019年に企画が立ち上がりましたが、コロナなどの影響もあり2度延期になりました。三度目の正直で2024年2月にようやくクランクインしたのですが、それまでの5年の月日のなかで脚本も変わっていきました。

 実は最初の脚本をいただいたときは、自分とグスクがいまいちリンクしなかったんです。その後、2回の撮影延期を経て、変化した脚本を読んだときは、作品・グスク・自分の距離がすごく近くなったように感じました。

 ただ、グスクという人物像は僕一人がイメージしたものを演じたというわけでなく、監督をはじめ、メイクさん、衣装さん、本当にみんなで「こういうのどうかな?」と一緒になって作り上げていったんです。すごく牛歩な感じで、グスクに近づいていきました。

――グスクがその背中を追いかける戦果アギヤーのリーダー・オンは、妻夫木さんと20年来の俳優仲間で共演経験多数の永山瑛太さんが演じられました。双方が与えあう役の影響がすさまじかったように感じますが、永山さんとの共演についてはいかがでしたか?

 最初はスケジュールの関係もあり、瑛太は出演が難しいかもしれないという話があったんです。そのときに一度彼とやり取りをしていて、「どういう感じなの?」と聞かれたので、「俺は監督と心中するつもりだよ」と伝えました。もともと監督にもそう言っていたんです。この作品をやるからには、それぐらいの覚悟は当然あったので。もちろん、その言葉が彼の出演の決め手になったわけじゃないだろうと思うんですけどね。

 そもそもオンちゃんという役は、いろいろなやり方で見せることができちゃうんですよ。コザの人たちが慕う英雄で、言ってしまえばカリスマなので、かっこよく演じることももちろんできるし、魅力的に見せるために生き生きやったり、様々なアプローチができると思う。だけど、僕が「本当に瑛太がオンちゃんで良かった」と思うのは、彼がね、とにかく“いてくれた”からなんです。

2025.09.20(土)
取材・文=赤山恭子
撮影=山元茂樹
ヘアメイク=大上あづさ
スタイリスト=カワサキタカフミ