頭に浮かぶのは12歳を迎える少年の一人旅
山口 既に、自分たちのファンはしっかり押さえていますし、日本の音楽シーンでもポジションを持っているバンドです。そんな彼らのキャリアの中での、今回の楽曲の位置づけはわかりませんけれど、ネットのクチコミを精緻に分析しているヒット曲予測ランキングであるRUSH発売前チャート(外部サイト)では、6月6日付で7位です。6月18日の週の中では1位ですから、期待度の高さが伺えます。ただ、キム・ヒョンジュンと同週なので、久々のオリコン1位は微妙ですね。あくまで「所有のチャート」であるオリコンは、初回特別盤などのバージョン違いを複数買いするファンのパワーに左右されますから、人気のバロメーターではあるけれども、純粋に楽曲の力は反映されません。
伊藤 それが今のオリコンですからね。RUSHのような新しい指標が出てきたことで、ユーザーもチャートを選ぶ時代になったんですね。話を楽曲に戻しますけど、この曲は良い意味でかなりトガッてる、悪くいえばちょっとキャッチーさに欠ける。それってロックバンドとしては悪いことばかりではないけど、それをカバーするイメージ戦略がないとコアファン以外の人たちにはTAKUYA∞のメッセージは届かないかもしれない。ありきたりの販促ではない、クリエイティブな戦略があることを期待したいです。せっかく面白い世界観を持った作品になっていますから。
山口 人気ロックバンドとファンの関係は、宗教的になりがちですが、UVERworldは、ファンがTAKUYA∞に対して美しいくらいのカリスマ性を感じている印象です。いまどきの言葉で言えば、「TAKUYA∞ネ申」ってことでしょうか。
伊藤 (笑)あと、この曲は歌詞をすごく大切にしていて、詞先で作ったような響きがある。それだけに言葉が強く浮き出て、作者の想いが手に触れられるようにリアルに感じられる。そして、そこにはいくつかの絵が出てくるんだけど、ひとつだけ作者が描かなかった絵があるように思えました。その絵を妄想してみました。
12歳の誕生日を7日後に迎える少年は旅に出ることにした。土曜日の午後、ランチ用に母親が作っておいてくれたオニギリ2つと食料庫にストックされていたカップヌードル3つ、冷蔵庫に入っていた500ミリリットルのペットボトルの水と魚肉ソーセージ1本、寝袋とスイスアーミーナイフをバックパックに詰め込んだ。国道1号線を2日間歩き続け、三重県の手前まできて脇道の林道にはいった。3日目、少年の目に飛び込んでくるのは岩のようにゴツゴツした木の幹と、緑を何重にも重ねてどす黒くなった森。コンクリートとも砂利ともいえない物で、かろうじて舗装された道を歩き続けると、やがて土だけに覆われた地の上を木の根が泳ぐだけの世界がひっそりと少年を包む。もう千年、人類が足を踏み入れていないような森の中、ほどよく平らになった窪みを見つけると、そこに荷物を置き、寝袋の上に座った。上着のポケットの中から、まだ封の切られていないマルボロ赤とZippoを掴み出し目の前に置く。少年は12歳になるまでに、このマルボロ赤を吸いきり、バックパックの中身と共にこの深みで過ごす。少し死に近づくことで、大人になる旅。
山口 今週の妄想分析は荘厳ですね。哲学的な映画作品のようです。
UVERworld「7日目の決意」
ソニー・ミュージックレコーズ 2014年6月18日発売
初回生産限定盤(CD+DVD)1,500円(税抜・以下同)、通常盤(CD)1,204円
■UVERworldは、2005年にメジャーデビューを果たしたロックバンド。本作は、マニピュレーションとサックスを担当する誠果が加入し、6人組となって以降初のシングルとなる。表題曲は、ヴォーカルのTAKUYA∞が見た夢が元になっているんだとか。
■「7日目の決意」作詞・作曲/TAKUYA∞
■オフィシャルサイトURL http://uverworld.jp/top.html
【動画サイト】
「7日目の決意」
URL https://www.youtube.com/channel/UCnziFQs4Ihms4UtxmVZP6cg
<次のページ> 【次に流行るもう一曲】じん「daze/days」
2014.06.15(日)
文=山口哲一、伊藤涼