【次に流行るもう一曲】
じん「daze/days」

ネットを基地にしたマルチプロデューサーの旗手

伊藤 同週に、じん「daze/days」のリリースがあります。彼は自然の敵Pという話題のボカロP(ボーカロイドプロデューサー)で、ここ3年で話題のプロデューサーですよね。音楽プロデューサーと言うよりは、ネットを基地にしたマルチプロデューサーという印象ですね。

山口 ニコニコ動画をホームグランドにするボカロPが、注目を集めて久しいですが、その中でもじんは、傑出した存在ですね。「カゲロウプロジェクト」という楽曲から派生したラノベ(ライトノベル)が累計で、200万部売れたというニュースには驚かされました。

伊藤 凄いですよね。音楽から小説、コミック、アニメになって、もしかしたらテレビドラマや映画にも発展するかもしれませんもんね。今までの“CDを売る”というシンプルなビジネスから、かなりの膨らみをもった形ですよね。こういうのをメディアミックスって言うんですか?

山口 そうですね。新種のメディアミックスでしょう。僕がメディアミックスという言葉を始めて聞いたのは、角川書店の社長が、角川春樹さんだった頃の角川映画です。薬師丸ひろ子、原田知世、渡辺典子が角川3姉妹と言われて、小説と映画と音楽が相乗効果を生みながら大ヒットしていました。今や、角川歴彦社長が、ニコニコ動画を運営するドワンゴとの経営統合を発表していますので、時代は進んでいるなと言う印象です。クリエイター発というのが、今を象徴していますね。

伊藤 そうなんですね。じんの曲は、短編小説のように展開していくので、スピーディーに流れていく歌詞は耳だけで追って行くのは困難。でも、ある意味では最初から活字と一緒に見せることを意識した楽曲なので、メディアミックス化は必然だったかもしれないですね。

山口 メディアの外見は変わっても、ユーザーから支持される作品が生き残っているという意味で、本質は変わらないのかもしれませんね。ちなみに、この「daze/days」はRUSHの発売前ランキングで10位です。ネット発の作品が必ずしもインターネットのクチコミランキングで上位とならないのが面白いですね。

伊藤 なんていうか、まだ計り知れないジャンルって言う感じがワクワクしますね。映像と楽曲がセットで成り立っている作品は、最近多くみられるようになったけど、こういう曲が本気でヒットをすると、Jポップは新時代に突入ですよ。

じん「daze/days」
ウルトラシープ 2014年6月18日発売
初回生産限定盤A(2CD+DVD)2,500円、初回生産限定盤B(CD+DVD)2,100円、通常盤(CD+DVD)1,600円
■「daze」はTOKYO MX、BS11他で放送中のアニメ「メカクシティアクターズ」のオープニングテーマ、「days」は同じくエンディングテーマ。「メカクシティ~」においては、じん自身が脚本、シリーズ構成、音楽プロデュースなどを手がけている。
■オフィシャルサイトURL http://mekakushidan.com/

【動画サイト】
「daze」

URL https://www.youtube.com/channel/UCu33JdVED-0vqaNyw_bCTKg

山口哲一 (やまぐち のりかず)
音楽プロデューサー、コンテンツビジネス・エバンジェリスト。(株)バグ・コーポレーション代表取締役、「デジタルコンテンツ白書」(経産省監修)編集委員。プロデュースのテーマに、ソーシャルメディア活用、グローバルな視点、異業種コラボレーションを掲げて、音楽とITに関する実践的な研究を行っている。著書に『ソーシャルネットワーク革命がみるみるわかる本』(ダイヤモンド社)、『ソーシャル時代に音楽を“売る”7つの戦略』『プロ直伝! 職業作曲家への道』(リットーミュージック)がある。最新刊は『世界を変える80年代生まれの起業家 ~起業という選択~』(スペースシャワーネットワーク)。詳細プロフィールはこちら
Twitter@yamabug https://twitter.com/yamabug
ブログ「いまだタイトル決めれず」 http://yamabug.blogspot.jp/
作曲家育成セミナー「山口ゼミ」 http://www.tcpl.jp/openschool/yamaguchi.html
WEDGE Infinity連載「ビジネスパーソンのためのエンタメ業界入門」 http://wedge.ismedia.jp/category/entertainment

伊藤涼 (いとう りょう)
音楽プロデューサー、ソングライター。ジャニーズ・エンタテイメントで『青春アミーゴ』などのミリオンセラーをプロデュース、後にフリーランスに。ソングライターとして、乃木坂46『走れ!Bicycle』、AKB48『ここにいたこと』などの作品がある。作詞アナリスト、フードミュージックプロデューサーとしても活躍。論理的で明晰な分析力に注目。
マゴノダイマデ・プロダクション http://www.mago-dai.com/
ブログ「伊藤涼の音楽」 http://ameblo.jp/magodai/
伊藤涼が主宰する作詞研究室リリック・ラボ http://www.mago-dai.com/?p=551

Column

来月、流行るJポップ チャート不毛時代のヒット曲羅針盤

音楽ビジネスとITに精通したプロデューサー・山口哲一。作詞アナリストとしても活躍する切れ者ソングライター・伊藤涼。ますます混迷深まるJポップの世界において、この2人の賢人が、デジタル技術と職人的な勘を組み合わせて近未来のヒット曲をずばり予見する!

2014.06.15(日)
文=山口哲一、伊藤涼