EVのバスやバイオ燃料バスを導入

 そして、フランス流の持続可能な都市をつくっていくことを目的として、経済的、社会的な課題解決と環境的な課題解決の両立を目指しました。

 中でもヨーロッパを中心に世界でも話題となった政策が、2018年に始まった公共交通機関の無償化です。これによってかつて自動車を利用していた人の半分以上がバスを利用するようになり、2017年と比較して2024年はバスの利用者が2倍に増えました。

 自家用車で通勤すると平均で年間およそ800ユーロかかりますが、これが無料になることで可処分所得が増え、経済的にも良い影響をもたらしています。

 また、それまでさまざまな事情で移動できなかった人たちが移動できるようになり、孤立を避けられるなど社会的にもポジティブな影響を与えています。公共スペースの利用も増加したほか、中心街にある商店街では13%ほどあった空きスペースが、およそ8%まで減少しています。

 さらに駐車場のない工場まで誕生。レールを敷設して自動運転シャトルによって通勤できるようにしたのです。これによって自動車通勤をなくしただけでなく、駐車場として使われていた広い土地を緑化することもできました。

女性がダンケルクの観光施策を推進

 こうした公共交通機関の無償化をはじめ、経済的、社会的な課題解決と環境的な課題解決の両立を目指すダンケルク。同時にロンドン、パリ、ブリュッセルから3時間以内という地理的な優位性を活かすべく、観光的にも魅力的な場所にすべくさまざまな取り組みを行っています。

 港湾都市であるため、夏はカイトサーフィンやローイング、セーリングをはじめ、さまざまなマリンスポーツが楽しめますし、マリーナの整備が終われば、プレジャーボートにも乗れる予定です。ツール・ド・フランスやダンケルク4日間レースが開催されるほどサイクルロードレースも盛ん。

 屋内型の中央市場もオープンしたばかりで、食文化も体験できますし、中心地にはカジノもできる予定など、さまざまな形でダンケルクを満喫できます。

ダンケルクのアートの拠点は建築も話題

 文化的にも注目したいのがフラック地域現代美術センターです。こちらは建築界のノーベル賞と称されるプリツカー賞を受賞したアンヌ・ラカトンとジャン・フィリップ・ヴァッサルが手がけた文化センターです。ダンケルクの歴史を物語る造船所をひとつ遺し、その隣に造船所と同じ建物を建てて、地域現代美術センターを作りました。

 ちなみに10月12日(日)まで銀座メゾンエルメスにてフラック地域現代美術センターが所属する作品を展示する現代美術地域コレクション「FRAC Grand Large」が開催中なので、ぜひ注目してみてください。

 さらにはホテルも整備され、海辺の眺めの良い場所を始めとするさまざまなエリアに新しいホテルも建設されています。運河のある街並みもフォトジェニックで、異国情緒あふれる風景にたくさん出会えるはず。

 日本ではまだまだ知られざる街、ダンケルク。自然が豊かでエコなこの街でなら、ユニークかつ思い出に残る旅ができそうです。

TFC

電話番号 03-5770-4511

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CREA Traveller

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2025.08.07(木)
取材・文=石川博也