
ヴィンテージの生地を使ってオリジナルのクッションやピローなどを作るデザインユニットが、ウィーンを拠点とするウィーナー・タイムズです。その新作コレクション「DEZAIN – SENSHOKU RAIFU」が、3日間限定で東京・参宮橋にあるTEN10 STUDIOにて展示・公開されました。
日本初公開であり、受注販売もされる今回のコレクション。使われている生地はオーストリアを代表するファブリックメーカー、バックハウゼン社のものが中心になります。
消えゆく貴重なテキスタイルに新たな命を吹き込む「DEZAIN – SENSHOKU RAIFU」

バックハウゼン社は1849年創業で、デザイン集団ウィーン工房(1903年~1932年)がデザインしたファブリックを製造したことでも知られています。173年の歴史を重ねてきたバックハウゼン社ですが、2023年に事業を停止。消えゆく貴重なテキスタイルに新たな命を吹き込むプロジェクトとして、ウィーナー・タイムズのふたりが制作した新作が「DEZAIN – SENSHOKU RAIFU」シリーズになります。

「DEZAIN – SENSHOKU RAIFU」シリーズは、ウィーン工房で活躍した上野リチことフェリーチェ・リックス=ウエノのテキスタイルデザインからインスピレーションを受けて制作した作品が中心です。甘すぎず辛すぎずの大人かわいいデザインが魅力となっています。展示を機に来日したウィーナー・タイムズのふたりに新作のことや活動内容、ヴィンテージファブリックの魅力などについて聞いてみました。

ウィーナー・タイムズはもともと知り合いだったスザンネ・シュナイダーとヨハネス・シュヴァイガーが、ともにテキスタイルが好きだったことから2016年に結成されました。
ファッションではなく室内装飾のためのマテリアルやテキスタイルを扱いたいと思い、結成前から注目していたクッションをつくることになったとヨハネスは話します。その理由は少し意外なものでした。
「クッションは生活必需品ではなく、部屋の装飾品の意味合いが強いもの。現代ではシンプルな部屋を好み、装飾品は必要ないと思う人が多い中、あえてクッションを作ることはおもしろいと感じました」とヨハネス。

実はウィーナー・タイムズのふたりはクッションを作っていますが、テキスタイルをデザインしているわけではありません。いろいろなヴィンテージファブリックを使って、パッチワークをすることにこだわってきました。それについてヨハネスは、別々のテキスタイルデザインを組み合わせることによって、さまざまな時代を表現できるからだと話します。
「例えば、アーツ&クラフツ運動で知られるウィリアム・モリスとウィーン工房のヨーゼフ・ホフマンのテキスタイルデザインを組み合わせてみます。そうすると19世紀末のイギリスと20世紀初頭のオーストリアのデザインを合わせることになり、ひとつのクッションから1900年前後の空気感を表現できるところがおもしろいと思うんです」
2025.07.08(火)
写真・文=石川博也