キャリアの転機となったミュージカル「黒執事」
――それは当たり役となった「黒執事」で初挑戦したミュージカルにもいえることですよね?
そのときは、もちろん「え、ミュージカル?」でしたよ(笑)。ニューヨークで見た2本と「アニー」ぐらいしか見てなかったですし。しかも、まったくR&Bとは違う世界観じゃないですか!? さらに、大人気の原作ということもあり、ミュージカル化する際、決していい意見ばかりではなかったんですね。演じるのが、初ミュージカルの僕ですからね……。あの頃は、いろんなことに戸惑いながらも、目の前にあることをがむしゃらにやるしかなかった。でも、いざフタを開けてみると、いろいろ意見はありましたが、意外といい評価が多かったんです。そのことが自分を後押ししてくれたのは事実です。でも、初演の時点では芝居の楽しさにはまだ気付いていなかったですね。
――主人公のセバスチャンはこれまでに3度演じていますが、振り返ってみると「黒執事」とはどんな作品だといえますか?
もはや、セバスチャン=俺って感じです。別に、ほかの人に演じてもらいたくないという意味じゃないですよ(笑)。明らかに自分を変えてくれた作品ですし、自分の芝居の根の部分を作ってくれた作品であり、役だと思うんです。悪魔で執事であるという、現実からかけ離れたファンタジーなキャラ設定のなか、自分の中でどうリアリティを出して埋めていくかみたいなことを考えることが楽しかった。3度目ともなると、セバスチャンを演じるというより、自分とセバスチャンが重なる瞬間をどこかで求めていたりしましたね。確実に自分のキャリアの転機になった作品だと思いますね。
~次回は最新主演舞台「タンブリングFINAL」について、たっぷり伺います~
松下優也(まつしたゆうや)
1990年兵庫県出身。2008年11月、Jin Nakamuraプロデュースのもとシングル「foolish foolish」でデビュー。09年ミュージカル「音楽舞闘会「黒執事」―その執事、友好―」に初舞台・初主演。類まれなるボーカリストとしての才能とダンスセンスを遺憾なく発揮し、舞台を成功に導いた。そのほか、舞台を中心に、映画・ドラマ・CMなどで活躍中。
『タンブリングFINAL』
自他共に認める史上最強の部活助っ人、烏森高校3年・望月宙(松下優也)。数々の運動部のピンチを救ってきた彼が最後に乗り込んだ部活は、火賀淳平(須賀健太)率いる男子新体操部。それぞれの想いを胸に対立する部員や教諭は高校最後の大会に出場できるのか?
http://www.tumblingtbs.jp/
大阪公演:6月28日(土)、29日(日) シアターBRAVA!
東京ファイナル公演:7月16日(水)~21日(月・祝日) 赤坂ACTシアター
くれい響 (くれい ひびき)
1971年東京都出身。映画評論家。幼少時代から映画館に通い、大学在学中にクイズ番組「カルトQ」(B級映画の回)で優勝。その後、バラエティ番組制作を経て、「映画秘宝」(洋泉社)編集部員からフリーに。映画誌・情報誌のほか、劇場プログラムなどにも寄稿。
Column
厳選「いい男」大図鑑
映画や舞台、ドラマ、CMなどで活躍する「いい男」たちに、映画評論家のくれい響さんが直撃インタビュー。デビューのきっかけから、最新作についてのエピソードまで、ぐっと迫ります。
2014.06.20(金)
文=くれい響
撮影=鈴木七絵
ヘア&メイク=武部千里