令和7(2025)年6月30日、東京都千代田区六番町に出雲から来た十割そばの店がオープンした。「出雲十割そば塩名人市ヶ谷店」である。

 しかもファスト系の店として誕生した。経営は島根県出雲市に本社を置く「株式会社丸三」。すでに出雲市内に2店舗営業しており、満を持して東京に出店したということのようだ。 

都内で「出雲そば」の店は少ない 

 その情報を聞いて懐かしい記憶がよみがえった。東京で出雲そばというと、我々オールド世代なら神保町すずらん通り近くにあった「出雲そば本家」である。重厚な店内、割子(わりご)そばの重い陶器のうつわ、濃い辛じる、太めの黒いそば。どれをとっても更科系が人気の東京人が出雲地方の本格そばを味わえることができる唯一の店であった。しかし、平成17(2005)年頃には閉店し、都内23区で出雲そば専門店に出会えることはなくなった。 

 時代は令和になり、もちろん、旧スタイルの出雲そばが誕生するわけもなく、今風のそばを提供してくれるのだろう。さっそく7月18日の午後2時ごろ訪れることにした。 

 東京メトロ麹町駅5番出口から地上に出て、日テレ方向へ歩いて行く。3分程歩くと到着する。個人的には20代からお世話になってきた大衆イタリア料理店「ラ・タベルナ」が入るビルである。

 余談だがバブル時代一世風靡した「イタリアントマト」はここから派生したことは意外と知られていない。 

2025.08.09(土)
文=坂崎仁紀