つい夜更かしして観てしまう韓国ドラマ。スタイリッシュなオフィスで働く主人公が、仲間とともに奮闘し、恋に仕事に全力を尽くす姿は、何度見ても胸がときめく王道ストーリーです。そしていまTikTokやInstagramといったSNSでは、そんな韓国ドラマの華やかさをそのまま反映した、大手韓国企業で働く日本人女性たちの動画が注目を集めています。
ドラマのセットのようなオフィスに美味しそうなランチ、カッコよくて可愛いファッションに身を包み、アフター5までしっかりと楽しむその姿は、まさに憧れ。でも、これってどこまでリアルなのだろう……?
そこで、実際に韓国に本社があるアモーレパシフィック社で働く女性にインタビュー。韓国の大手化粧品メーカー・アモーレパシフィックで、人気スキンケアブランド〈primera(プリメラ)〉のマーケティングを担当する八重樫瑞(やえがし・みずき)さんにお話を伺いました。
『美男<イケメン>ですね』から韓国エンタメにドハマり
――大学までは普通に日本で暮らしていらっしゃったそうですが、韓国で働くことを意識されたきっかけは、何だったのでしょうか?
5年前に韓国に来たのですが、その時の目的は就職ではなく、大学院に進学するためでした。大学在学中に韓国に交換留学した経験があり、そのときから「もっと深く韓国で学びたいな」と思っていたんです。大学卒業後はいったん普通に日本で就職したのですが、その思いをどうしても捨てきれず、1年半で会社を辞めて、2025年に再び韓国へ。大学院では翻訳を専攻しました。
ただ、ちょうどコロナ禍とかぶってしまい、人脈を広げたり人と自由に会ったりするのが難しい時期で、大学院生活はかなり大変でした。正直、「卒業後は日本に帰って就職しようかな」と思っていたほどです。
でも、社会人経験が1年半しかなかった私にとって、日本で再就職するのは不安がありました。日本の基準で見ると、年齢の割にキャリアがほとんどないので……。一方で韓国は、男性の方は兵役の義務がありますし、資格の勉強や留学などで休学する人も多いので、20代後半になって初めて就職するというケースも珍しくありません。そのため、韓国の方が年齢によるハンディキャップをクリアしやすいのではないかと考えました。
――なるほど! 単純に韓国で働きたいというだけではなかったんですね。
もちろん韓国で働いてみたいというのもありましたが、韓国で社会人経験を積むことは、自分のキャリアを考えても、プラスに働くんじゃないかと思ったんです。そこで、韓国での就職を意識するようになりました。
――元々韓国に興味を持ったきっかけは何だったのですか?
中学生のときにフジテレビで数多く放送されていた韓流ドラマを観ていたのがきっかけです。『美男<イケメン>ですね』とか……。あの時代にドラマを観て、韓国のエンタメがすごく面白いと感じて、さらにアイドルもすごく好きで。そこで韓国語に興味を持って独学で勉強し始めて、大学に行ったら、もう絶対に韓国留学したい! ってその頃から思っていましたね。本当にミーハーだったんです(笑)。
――日本ではどのような会社に就職されていたんですか?
中堅の化学メーカーです。半導体製造用の産業ガスを扱っていまして、韓国向け営業のほか、ガス容器の戻りの通関といった輸出入担当の業務を行っていました。
――では韓国語はそこでもバチバチに使っていた?
それが、韓国に現地法人があったので、会社では韓国語を使う機会がまったくなくて(笑)。このままだと、韓国に関わりたくて仕事をしたのに、全然関係ないことしかできないかも……というところにも限界を感じて、やはり韓国で勉強をしようという気持ちになりました。
――実際に韓国で働くということを視野に入れられてからは、どんな準備をされましたか? 日本の就職活動とは違いがありましたか?
流れとしては日本と同じで、最初は求人サイトに登録する……という感じでした。ただ、外国人が働くにはビザの要件があるので、どんな職種でもOKというわけではありません。日本マーケティングや日本語を使う事業じゃないと就労ビザがおりないんです。なので、日本人や日本語に関する需要が、どういった業界にどのくらいあるのか、というのをまずはリサーチしました。
同時に、学内でどんな支援が受けられるかも、かなりリサーチしました。私が通っていた韓国外国語大学の大学院は留学生がかなり多かったので、外国人留学生向けの就職支援プログラムも充実していました。履歴書の添削や面接練習、求人情報の紹介などなど……。それらも活用して就職活動の準備を始めました。
              
            