
早稲田大学のお膝元としてにぎわう学生街・高田馬場。駅を出ると“ガチ中華”と呼ばれる本格中華料理店が軒を連ね、ミニ中華街を思わせる様相に。
留学生の多い早稲田大学をはじめ、日本語学校や留学生向けの寮があるなど、高田馬場はもともと中国人や台湾人が多いエリア。ガチ中華のお店がぐっと増えたのはコロナ禍以降で、国に帰れなかった中国人留学生たち向けに故郷の味を提供する店が増えた、というのが定説です。
中でも注目したいのは、中国・台湾の本場の味を再現したガチ中華スイーツ! 中国や台湾からの留学生はもちろん、日本人にも大人気の専門店やカフェをご紹介します。
第2弾は、広東省・順徳出身のご夫婦が営む「良縁糖水(りょうえんとうすい)」へ。広東や香港など中国の南の地方でよく食べられている“糖水”というおやつの日本初の専門店で、とろりとしたくちどけのいいスイーツや、ミルキーなスープ状のデザートがいただけます。
しぼりたてフレッシュな、水牛のお乳で作るミルクプリン

“糖水”とは広東地方に特有のデザートで、桃の樹液や体内の熱をとる仙草など、薬膳にもなる食材を使ったヘルシーなスイーツです。糖水という語感からもくちどけのよさが伝わるように、つるり、ぷるん、とろとろなど、ゼリーやプリン風の、夏に嬉しい食感がたくさん。
名物の「ションペイナイ(双皮奶)」は、店主の侯 子樑(ほう しりょう)さんの故郷・順徳の味を再現したもの。ミルクプリンに似たスイーツですが、原料は水牛のお乳!
「双皮奶は順徳発祥のスイーツで、乳脂肪分の高い水牛のミルクで作るのが本場・順徳の味。香港や広州でもよく食べられますが、それらの地域のものはほとんど牛乳製なんですよ」と店主の侯さん。発祥の味を楽しめるよう、日本の水牛を探しまくったそうです。なので、ミルクは輸入ではなくフレッシュな国産。それを聞くだけで期待が高まりますね。
作り方もプリンとは異なり、双皮=2つの皮、奶=ミルクという名の通り、ミルクを2回蒸して膜を作った料理という意味。1回ミルクを温めて膜(皮)を作り、膜だけ器に残して牛乳を取り出した後、卵白と砂糖を混ぜて器に戻し入れ、さらに蒸してかためます。つまり、器の下に1回目の膜、器の中央に卵でかたまったミルク液、さらに一番上にまた膜があるというユニークなスイーツなんです。

口に含むと、ミルクの甘い香りがふんわり広がって、優しい気持ちに包まれます。中国人はプレーンで食べることが多いそうですが、日本人のお客さんは圧倒的にトッピングつきで楽しむそう。トッピングの定番人気は「小豆」、珍しいものを食べたい人は「ピーチガム(桃の樹液)」をチョイスして。
「ピーチガム」は、ゆるゆるの寒天のような食感で、淡い甘さが水牛ミルクの味わいを引き立てます。「小豆」は豆感をしっかりいかした粒々の食感がよく、モチモチの「芋園」はのせると食べ応えがアップ。ほかにも蓮の実や黒もち米、タロイモなどものせられますが、欲張りすぎず、最大3種くらいにとどめたほうがバランスがいいようです。

2025.08.09(土)
文=嶺月香里
写真=鈴木七絵