この記事の連載
倉 悠貴さんインタビュー【前篇】
倉 悠貴さんインタビュー【後篇】
正気から狂気へと変わっていく正宗を演じるのは、やりがいがあった

――今回、倉さんはかなり重要な役どころです。その重圧も大きかったのではないでしょうか。
倉 そうですね。僕は全編にわたって登場する役ではないのですが、僕が登場する第5、6話は、ほぼ僕と、後藤家前当主・後藤銀の若い頃を演じた恒松(祐里)さんがメインなんです。
全8話のうち、2話分でメインを務めるというのは、非常に大きなプレッシャーでした。撮影が終わったいまでも、果たしてちゃんとその大役を担えていたのかどうか、不安です。

――役作りも大変だったのではないでしょうか。
倉 はい、いままでやったことのないキャラクターだったので、役をつかむまでに少し時間がかかりました。これまで僕が演じてきたのは、暗くて陰のある役や、明るい髪色でチャラい役が多かったので、「なんでこの役が僕にきたんだろう……」という思いもありました。
でもせっかく選んでいただいたのだから、自分ができる「正宗」を精一杯やってみようと、役に挑みました。
僕が演じた神山正宗は、供花村にある来乃神神社の宮司の息子で、根はすごく真面目でピュアな人物です。それが後藤銀に出会って、「村を守りたい」という思いと銀への思いで徐々に狂っていく。その、正気から狂気へと変わっていく正宗を演じるのは、すごく難しくてやりがいがありました。

――倉さんが演じたのは、後藤家の過去の回想パートです。現代パートとの違いはどう意識されましたか?
倉 時代考証については、脚本にだいぶ助けていただきました。同じ方言でも、70年前と現代とでは少し表現やニュアンスが違うので、言葉遣いだけでも、かなり昔らしさは出せていると思います。
それよりも、「いいところのお坊ちゃん」の雰囲気を醸し出すことのほうが大変でした。村人から一目置かれている宮司の息子で、実際に「坊ちゃん」と呼ばれてもいるので、育ちの良さやまっすぐな人柄を表すために、立ち姿や話し方は、僕なりにかなり意識しました。
あと、大変だったのは雪道でのロケです。雪の中を歩くシーンが多かったのですが、歩き慣れていないので、滑ってNGになってしまうんです。正宗は雪道なんて歩き慣れているはずですし、雪道であっても凜として颯爽と歩かなければいけない。そこは苦労しました……。涼しい顔をして歩いていますが、裏では何回かNGを出しているので、ぜひ観ていただきたいと思います……。
2025.03.19(水)
文=相澤洋美
写真=志水 隆
メイク=NOBUKIYO
スタイリスト=伊藤省吾 (sitor)