シャイで知られるルイスがこんなことを言うとは!

 ちなみにルイスはデミグラスソースにXO醬を足したくらいの濃すぎる顔立ち(それが魅力なんだけども)と、あまりに幅広すぎる役柄(巨匠ジョニー・トーの『エレクション/黒社会』のようなノワールから能天気ラブコメまで、極悪人から猫エイリアンに振り回されるダメ親父まで、なんでもやっちゃう!)が結びつかないのか、私がいくら推しても日本では人気が今ひとつだったが、50代になってついに若者たちに慕われる激シブ兄貴というキャラが大受け。

「皆さん、こんにちは。ルイスです。愛してる」と日本語で挨拶すると、大歓声が。シャイで知られるルイスがこんなことを言うのは初めて見たー。こんな日が来るとは、泣きそうである。

 司会のくれい響さんに印象に残っている場面について聞かれると、ルイスは「チャン・ロッグワンに叉焼飯をごちそうする場面が好き。撮影で彼が急いでかき込んで、いきなり吹き出したんです。米や叉焼が私の顔に飛び散ってしまったが、監督はカットをかけてくれないので、仕方なく演じ続けました。でも叉焼飯は人気がさらに出るでしょうし、私も大好きなのでまた食べに行こうと思います」と笑わせた。

 香港の庶民の味、叉焼飯。コラボメニューを出している銀座の香港料理店「喜記」では売り切れることもあるそう。中華街のお店などでも出しているので、ぜひ一度お試しを。

 一方、レイモンド・ラウは、「アクションが印象に残っています。アクション監督の谷垣健治さんに感謝しています」と誠実なコメント。

 トニー・ウーは、「最後、仲間と飛行機を見つめるところが好きです。あの飛行機は未来への希望を象徴しています。希望を持ち続けることが大切というメッセージが伝われば、嬉しいです」と語り、ジャーマン・チョンは「仲間で麻雀するシーンが印象的です。アップのシーンだったので、見るたびに当時を思い出します」と振り返っていた。映画は三部作になる予定なので楽しみはまだまだ続く。

 映画のもう一つの主役ともいうべきは、九龍城砦そのものだ。日本円にして10億円近い巨費を投じて再現したセットについて監督は「九龍城砦を再現するにあたり、日本にあった九龍城砦の資料や写真集がとても参考になりました。そういったものを残してくれた日本の皆さんに感謝します」とコメント。

 映画の舞台は過去の香港ではあるが、混沌とした時代への懐かしさと同時に、先が見えない現在の香港が投影されてもいる。その象徴が九龍城砦であり、その隣にあった旧・香港国際空港(啓徳空港)だ。1994年に九龍城砦は取り壊され、97年には香港が英国から中国に返還され、98年に空港はランタオ島に移転した。

 その空港跡地に立つショッピングセンター、AIRSIDEでは「九龍城寨之圍城 電影展覧」と題された展覧会が行われており、撮影セットが再現されている。マダムアヤコは正月休みを利用して行ってきたが、これまた作り込みがすごい! 龍兄貴の床屋もあるし、信一の部屋には、デヴィッド・ボウイや、デュラン・デュラン、ポリスなど80年代のブリティッシュ・ロックのLPレコードが飾られているのも泣かせる。そのレコードもステレオも日本製というのがミソ。当時の香港では日本製が何よりクールだったのだ。

 展覧会は4月13日まで開催中なので、香港に行って体感してきてほしい。太っ腹なことに無料なので、浮いたお金でグッズを買うのも良し、叉焼飯を食べるのも良し。さらに4月10日から21日には香港国際映画祭(香港國際電影節)も開かれる。なんと今年の顔は、ルイス・クー! 特集上映では本人のQ&Aもあるはず。これはなんとしても香港に行かなくては。

『トワイライト・ウォリアーズ 決戦!九龍城砦』

1980年代の香港。5万人が暮らす無法地帯である九龍城砦に、黒社会に追われた密航者の若者、陳洛軍(レイモンド・ラム)が逃げ込んで来る。城砦の平和と秩序を守る床屋の龍捲風(ルイス・クー)は、彼を匿うことにし弟子の信一(テレンス・ラウ)、仮面の医者・四仔(ジャーマン・チョン)、十二少(トニー・ウー)らに託す。実は龍捲風は、かつて”竜巻”と呼ばれた伝説の拳の達人だった。これをきっかけに黒社会の大ボス(サモ・ハン)、硬すぎる肌を持つ王九(フィリップ・ン)らとの激闘が始まる。

新宿バルト9ほか全国公開中 配給:クロックワークス
https://klockworx.com/movies/twilightwarriors/

「九龍城寨之圍城 電影展覧」(香港AIRSIDEにて4月13日まで)
https://www.airside.com.hk/zh-hk/happenings/twilight-of-the-warriors-walled-in-exhibition

2025.02.27(木)
文=石津文子
写真=山元茂樹