チケットは10万円近くまで高騰したという話も
一行は2月23日に新宿バルト9で舞台挨拶を2回行ったが、どちらも超満員。実はチケット争奪戦が激しく、サーバーがダウンしたほどで、買えなかったファンが場外に詰めかけたり、あるサイトでは10万円近くまで高騰したという話も。転売ヤーにそこまで払うなら香港に行ったほうが良い気もするが、なぜそこまで日本で大受けしているのか。
ちなみに中華圏では原作小説「九龍城寨」3部作とコミック版がベストセラーという待望の映画化のため、大ヒットの素地はあった。ルイス・クー、リッチー・レン、アーロン・クォック、サモ・ハンらベテラン明星もずらりと並んでいる。
もちろん映画の出来は最高なのだが、今までも面白い香港映画はいくつもあった。例えば、本作と同様に日本人アクション監督、谷垣健治が参加している『レイジング・ファイア』も面白かったが、今回のように女性ファンが彼らのキャラになりきって舞台挨拶や応援上映に参加したり、ファンアートを描いたりという現象は起こらなかった。

まず第一に、キャラクターたちが濃すぎるほど、濃いこと。仮面の医者の四仔が日本のAVコレクターだったり(これには深い理由があるのだが)、敵役だが気功で弾丸も刀も跳ね返す硬直こと王九(演じるフィリップ・ンは昨年来日したため今回はいなかった)など、ほとんど少年ジャンプのノリ。原作「九龍城寨」が小説、さらに漫画化されてベストセラーになったという経緯もあり、ぶっ飛んでいるのだ。
実際、監督のソイ・チェンは日本でのヒットについて「要因はいろいろあると思いますが、アクションに漫画的な表現を加えていること。子供の頃、日本の漫画やアニメが大好きで、頭の中に自然と存在している。それを思い切り発揮できたことが、日本の皆さんに受け入れられた理由なのでは?」と分析していた。

第二に、兄貴分チームと弟分チームという棲み分けがなされているのも、話の上でもわかりやすい。チーム愛! 同時に、前述したベテランスターと若手俳優が戦う姿は、香港映画界の歴史を見るようでもある。今回、ステージに入場してきた時は、トップスターであるルイス・クーが一番の歓声を受けてはいたけれども、ファンの方たちの話を聞くと、やっぱり箱推しなんだなと実感。
命懸けで仲間を守る、男たちの関係性に萌えているのだ。このファンダムの盛り上がりは何に一番近いかなと考えると、『ボヘミアン・ラプソディ』や、インド映画『RRR』の応援上映のムードに近い。つまり、男たちの熱い絆に燃える、箱推しなのだ。

実際、一行は日本語題名が書かれたスウェット・シャツを自前で作ったそうで、今回は来れなかった弟分チームのリーダー格、信一を演じたテレンス・ラウのことも言及するなど、まさにチーム愛に溢れているのだ。
2025.02.27(木)
文=石津文子
写真=山元茂樹