金運上昇する黄金の神!? 紅葉の名所では野点で心を整える
西行庵から山道を10分ほどすすんだところで、熊野方面から吉野山へとつづく修験道の修行の道「大峯奥駈道」と合流。さびれた道標がその長い歴史を物語っていて、辺りを包む厳かな雰囲気に背筋が伸びる思いを感じます。
合流地点から間もなくして「金峯神社」にたどり着きました。中世以降に修験道の行場として使われた金峯神社は、吉野山から大峯山上ヶ岳一帯の地主の神、金山毘古神(かなやまひこのかみ)が祀られています。
ちなみにこの金山毘古神、古来より生物の枯死を防ぐ神として崇敬され、金鉱の山を司る“黄金の神”として祀られてきたことから、金運のご利益があると言われています。
さらに社殿を下ったところには、僧兵の山狩りから逃れるために源 義経が身を隠したとされる「義経隠れ塔」が残っています。追手に囲まれた際、屋根を蹴破って逃げたことから“蹴抜けの塔”ともいわれるそう。
つぎに目指したのは高城山展望台で、金峯神社からは歩いて20分ほど。展望台につづく坂道は美しい紅葉の道として知られており、鮮やかに彩られた紅葉のトンネルが出迎えてくれます。
時間もちょうどお昼どき。展望台へ到着したら、まずはベンチに腰掛けて奈良の名物・柿の葉寿司を堪能します。
標高702mの高城山は、1333年に吉野で鎌倉幕府倒幕の兵を挙げられた大塔宮護良親王(だいとうのみやもりよししんのう)の吉野城の詰め城として砦が築かれました。そんな歴史をもつ一方で、山頂は広く平らで見晴らしもよく、開放的な気分になれる場所でもあります。
せっかくなので昼食の後は、紅葉を鑑賞しながら野点にも挑戦。奈良の雄大な自然のなかで静かにお茶を点てる時間は何とも贅沢で、ゆるゆると心がほぐれていくのを感じます。
高城山山頂での野点を堪能したら、ふたたび吉野駅に向けて歩みをすすめます。高城山展望台から20分下った先にある「花矢倉展望台」まで来ると、眼下には金峯山寺と吉野山の町並みが広がり、ゴールが近いことを知らせてくれます。
2025.02.05(水)
文=平野美紀子
写真=三宅史郎