日本のパティスリー業界に衝撃を与えたシリーズの誕生

――いよいよ、スーパーショートケーキの登場ですね。2004年9月1日に販売が開始されました。1ピース1,000円超えのケーキはニュースでした。当時、1ピース500円でも高価でした。

高山 開業40周年の記念にと、中島と考え、最高級の小麦粉、卵、生クリーム、イチゴにこだわって作り上げたのがスーパーショートケーキでした。

――卵をたっぷり使ったふわふわのスポンジ、なめらかな口溶けのクリーム、蜂蜜でマリネしたイチゴの渾然一体となった味わいは、お値段と共に評判になりました。

高山 原価を積み上げれば1,500円くらいになったのですが、お客様への謝恩の気持ちを込めて1,000円にしました。そのため、限定40個にさせていただきました。イチゴは「博多あまおう」を使いたかったのですが、期間が限られます。

 9月1日にはあまおうはありませんでした。ただ、中島があまおうにこだわったので、その後、あまおうの時期だけイチゴのスーパーショートケーキを作ることになりました。クリスマスのスーパーシリーズはもちろん、あまおうぎっしりです。

――高価なケーキに、お客様の反応はいかがでしたか。

高山 ありがたいことに、ネガティブな反応はなかったです。それまではお店として「ピエール・エルメ・パリ」が大人気でしたが、スーパーシリーズが登場し、お客様が「パティスリーSATSUKI」も目指してくださるようになりました。ホテルとショートケーキの相性は、私たちが想像していたよりよかったと思います。記念日にいらしてくださるゲストが特別なショートケーキを召し上がることは、ご褒美や思い出になりますから。

――そこからスーパーシリーズが定番化されましたね。2005年に「スーパーエクレア」「スーパーモンブラン」が出され、ついに「スーパーメロンショートケーキ」が登場しました。

高山 どれも連日完売となるなか、スイーツの王道であるショートケーキを通年で出したかったのですが、あまおうにこだわると、イチゴでは作れなかったのです。ではメロンにしようと、中島が3年もかけて探し、静岡・南伊豆のマスクメロンにたどり着きました。それで「スーパーメロンショートケーキ」が誕生したのです。

2024.12.20(金)
文=北村美香
写真=志水 隆