病院を出ると、昼間から天気が良かったからか、Tシャツでも過ごせるくらいのあたたかさだった。

 大学院の課題があるから夕飯は買ってしまおうと思い、そのままコンビニへ歩く。お弁当のコーナーへ近づくと、立ったままボーッとしている見知った顔を見つけた。

「遠野、おつかれ」

 驚いたのか、肩をびくりとさせてこちらを見る。

「卯月さん、お疲れ様です」

「どうしたの、ボーッとして」

「いやあ……なんか疲れちゃいまして」

「そっか。お疲れさん。プリセプター大変?」

 私は魚のフライののったのり弁に手を伸ばす。

「大変……ですね。それ、おいしそうですね。同じのにしようかな」

 遠野ものり弁を手にし、一緒にドリンクコーナーへ行く。

「卯月さんって自炊しないんですか? すごいしそうに見えます」

「たまにするけど、忙しいと買っちゃうことのが多いかな」

 私はいつも通り無糖の午後ティーストレートを手にする。

「……私もそれにしよう」

 遠野も同じものをカゴに入れた。疲れていて、考えるのがめんどうなのかもしれない。

「せっかくだから、お弁当あっためてもらって、近くで食べない?」

 近所の団地の公園にベンチがあるのを知っている。あそこなら、お弁当を広げていても変じゃない。

「いいんですか? 卯月さん忙しいでしょう?」

「どうせごはん食べてる時間は課題できないから、同じだよ」

 どう見ても、遠野は悩んでいる。少し話を聞いてあげたいと思った。

 濃いピンク色のツツジが、心地よい風に花びらを揺らしている。ブランコくらいしか遊具はないけれど、花壇はいつも丁寧に手入れされていて、ついつい長居したくなる公園だ。ゆっくり話すにはちょうどよい。遠野と並んでベンチに腰をかける。あたためてもらったばかりのお弁当から立ち昇るにおいが食欲をそそった。

「いただきます」

 ふたりで声に出して言ってから、お弁当を食べ始める。疲れた体に揚げ物は効く。フライはサクサク、のりはしっとりしていて、おいしい。

2024.11.08(金)