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第二の高校生活を送れた

――そう熱っぽく語ってから、「でも、演じていて特に嬉しかったのが、屋上で青春っぽいシーンを体験できたこと。僕の通っていた高校は、屋上に出ることができなかったので、屋上で寝転がったりしながら、本音をポロッと話したりするシチュエーションには憧れがありました。20代で、第二の高校生活を送れた感じです。高校生役がやれてよかった!」と、茶目っ気たっぷりの笑顔を見せた。屋上への憧れは、過去に観た青春映画や青春ドラマの影響だろうか?

 いや、特に何かの作品からの影響というわけではないです。そもそも僕、10代のときに学園ものの映画は観たことがなくて。今回直己を演じるにあたって、今まで観たことのなかったジャンル……少女漫画が原作の恋愛映画をたくさん観たんです。同じ幸田もも子先生が原作の『センセイ君主』とか『ヒロイン失格』、あとは『オオカミ少女と黒王子』も観ました。『オオカミ少女〜』は、学校で流行っていたのか、「3回回ってお手からワン」っていうフレーズだけは聞いたことがあって、当時「何のことだろう?」と疑問に思っていたら、「あ、この映画だったんだ」と(笑)。

 昔から、映画を観るなら、シリアスな人間ドラマとかアクションとか、そっち系に走っちゃっていたので、少女漫画の実写映画にどっぷり浸かるというのは、人生で初めての体験でした。過去にハマった映画ですか? シリーズものなら、『スパイダーマン』とか『スパイキッズ』。日本映画なら、昔から『クレヨンしんちゃん』が好きです(笑)。

――俳優として、学生時代を追体験できたことは楽しかったが、高校時代の自分にあって、今の自分にないものにも気づいたことがあったという。

 それは……無限の体力です(笑)。直己の場合は、あこ子ほどは全力疾走してないキャラクターなので、僕自身が、「全力疾走感が出しづらいな〜」とか思ったわけではないですが、やはり以前と比べて、体力が若干落ち始めている自覚はありますね……。

 高校生のとき、大人の方からよく、「若いうちだけだよ、そんなに体力が持つのは」「20代後半になったらいきなりガタッとくるよ」みたいなことを言われて、「はいはい」みたいに流していたんです。でも、今まさに、その大人の人たちの助言が真実だったと痛感しています。まさにすぎて、謝りたいです(苦笑)。

2024.11.03(日)
文=菊地陽子
撮影=榎本麻美
ヘアメイク=Sayaka(MASTER LIGHTS)
スタイリスト=TOGO MANAMI