木村柾哉さんが映画初出演にして初のW主演を務めた映画『あたしの!』。猪突猛進なヒロインと、木村さん演じる学校イチの王子様のラブストーリーは、それぞれの友情に助けられ、ときに邪魔されながら、お互いの大切にするべき感情に気づいていく成長物語でもある。
そのキラキラやキュンキュンだけじゃない、ヒリヒリとした成長痛も伴う感情のグラデーションを、音楽によって回収していくのが、INIが歌う主題歌「Break of Dawn」だ。
成長の余韻に浸れる主題歌に
デモを聴いたときは、少しだけ意外な感じがありました。撮影がクランクアップしてから、初号が出来上がる前に曲のデモをいただいたんですが、この映画に出演するにあたって、勉強のために少女漫画原作の実写映画をたくさん観てみたので、そのとき、たとえば西野カナさんの「トリセツ」(映画『ヒロイン失格』主題歌)みたいな曲がすごく印象に残っていたんです。あそこまでキラキラじゃなくても、同じ原作者の方のラブコメの主題歌なので、なんとな~く甘くてポップな路線なのかな? なんて勝手に想像していたのですが、「Break of Dawn」は、割と大人っぽいしっとりした曲調で。あとで聞いたら、監督の意向もあり、今回の曲調になったそうです。
でも、今回の曲調で最後を締めくくることで、すごく登場人物一人一人の成長の余韻に浸れるのかな、と思いました。コメディ要素の強い映画ですが、実は感情の機微が繊細に描かれているところが、僕がグッときたポイントでもあるので、その人間ドラマっぽい側面が強調されるというか。人が成長して大人になっていく過程が、「夜明け」というタイトルにも重なって、観てくださる人にとっての明日への希望にも繋がるのかな、と。
メンバーに余計なバイアスはかけたくない
――レコーディングのときは、「こういう映画の内容だから、こういう曲になった」というような説明を、木村さんからメンバーにしたのだろうか? それによって、感情の込め方も変わるような気がするのだが、木村さんは、「敢えてしなかったです」と言う。
僕が自分の考えを伝えることで、メンバーに余計なバイアスをかけることはしたくなかった。あくまで普段通り、自分たちのイメージのままにやってほしかったんです。今までもそうしてきましたし、その方が僕ららしいと思ったので。実際、それぞれの感性をぶつけてもらうことで、より深みのある楽曲になったと思います。
2024.11.03(日)
文=菊地陽子
撮影=榎本麻美
ヘアメイク=Sayaka(MASTER LIGHTS)
スタイリスト=TOGO MANAMI