スポーツが盛んな美しい山岳リゾート地
【Day1-2】St.Moritz(サン・モリッツ)
サン・モリッツ駅を降りると湿度のない爽やかな風が頬をつたう。スイス屈指の冬のリゾートとして有名なこの地は、“シャンパン気候”と呼ばれ、炭酸の泡のような爽快感ある天候、晴天率の年間平均が322日という過ごしやすい地域として知られている。
駅の目の前に広がるサン・モリッツ湖が街のシンボルであり、湖を囲む散歩道では犬を連れて散策する地元の人のほか、アスリートらしき人たちがランニングをしている。標高1,700メートルを超えるサン・モリッツはオリンピック選手の高地トレーニングにも使われており、今年のパリ五輪前にも走る姿があったという。冬は凍った湖の氷上を馬が走るレース「ホワイトターフ」や氷上ポロなども開催される。
ベルニナ山脈といくつかの湖が織り成す美しい景色は夏、冬ともに魅力があり、歴史的には約160年前にウィンターツーリズムが栄えた。クルム・ホテルの創業者が英国人ゲストに、イギリスの暗い冬とは違う晴れの日が多いサン・モリッツの快適さを伝え「もし冬のスイスに満足できなかったら宿泊代はいらない」という賭けをしたという。
その話に乗った英国人は太陽が眩しいスイスの冬に魅せられ、評判が広がり瀟洒なリゾート地として一目置かれるようになったのだ。中心地のドルフ地区にはブランド店や五ツ星ホテルが軒を連ね、プライベートジェットが離着できる飛行場もある。そんな華やかさと大自然が織り成すゆったりとした時間の流れを兼ね備えたバランスのいい山のオアシスだ。
2024.10.15(火)
文=梅崎奈津子
写真=橋本 篤
取材協力=スイス政府観光局、スイスインターナショナルエアラインズ、スイストラベルシステム、サン・モリッツ観光局