CREA Traveller 2024 vol.4の特集は、「いつか行ってみたいクルーズ、鉄道、ホテルの旅」。

 “移動時間を楽しむ”船旅・鉄道旅、“ひと所でくつろぐ”ホテル旅。旅のスタイルごとに異なる魅力があるが、共通点は、それぞれの船、列車、ホテル、それ自体が「旅の目的地」となり得る、数多の魅力を抱えているということ。車窓を流れる絶景を楽しむ鉄道旅、様々なエンタメを載せて海を航るクルーズ、その土地ならではのもてなしを堪能するホテルステイ。いつか……を叶えた時、人生に新しい喜びをもたらしてくれる旅先ばかりだ。まずは、その魅力を実感するべく、トレインジャーニーの聖地・スイスを8日間かけて旅をした。チューリヒを出発し山岳リゾートへと向かう。

CREA Traveller 2024 vol.4

いつか行ってみたいクルーズ、鉄道、ホテルの旅。

特別定価 1,650円

 九州とほぼ同じ面積に標高4,000メートル級の山々が48座そびえる雄大な自然に恵まれた国、スイス。

 国内には鉄道が隅々にまで通じており、神秘の氷河や名峰、豊潤な牧草地など圧倒的な”地球の美”を車窓から目の当たりにできる。移動には船も使いクルーズを楽しみながら趣きある町を巡っていく。

 スイスの東部からイタリアの街まで南下するベルニナ・エクスプレス。クール駅から始まり、山間ルートを進みサン・モリッツへと向かう。


玄関口チューリヒを出発、すぐに山景色へと変わる

【Day1/14:30】Zürich Hauptbahnhof(チューリヒ中央駅)

 なぜこんなにもスイスのトレインジャーニーは旅人を惹きつけるのか。その理由を確かめるためにチューリヒを出発し、美しい街々に立ち寄りながら氷河観光の名所であるユングフラウヨッホを目指す、8日間の鉄道旅に出かけた。

 バーゼル、ベルンそして隣国のリヨンやミラノ……。チューリヒ中央駅の電光掲示板には、国内外のデスティネーションが表示され、スイス最大の国際ターミナル駅の役割を果たしているのがわかる。改札はなく(車内検札でチェック)、街の通りからそのままホームへ行けるスムーズさ。時計の国だけあり発着の時間は正確だ。「発車のアナウンスやベルが鳴らないから、乗り遅れないように」との事前情報の通り、定刻になると静かにゆっくりと車両が動き出した。

 初日は、東部の街、クールを経由しサン・モリッツまで行く旅程。景色は街から山岳風景にあっという間に変わり7つの山頂が連なるクールフィルステン連峰などに目を奪われ、1時間15分でクール駅に到着。そこからは、スイス五大鉄道の一つであるイタリアの街ティラーノまでを結ぶベルニナ・エクスプレスに乗り換える。

 緑が輝く田園風景、木々に覆われた山間など、光と影の情景を繰り返しながら進んでいくと「ランドヴァッサー橋を通ります」との車内アナウンスが。この石橋は岩崖の間、足場がない場所に造られ鉄道建築の傑作といわれ、空中を走っている気分に。すぐにトンネルに入り、標高1,775メートルのサン・モリッツ駅に向かい列車は登っていく。

2024.10.15(火)
文=梅崎奈津子
写真=橋本 篤
取材協力=スイス政府観光局、スイスインターナショナルエアラインズ、スイストラベルシステム、サン・モリッツ観光局

CREA Traveller 2024 vol.4
※この記事のデータは雑誌発売時のものであり、現在では異なる場合があります。

この記事の掲載号

いつか行ってみたい クルーズ、鉄道、ホテルの旅。

CREA Traveller 2024 vol.4

いつか行ってみたい クルーズ、鉄道、ホテルの旅。

特別定価1,650円(税込)