解散から15年経ったノエルの今

 解散から15年経ち、60代を前にしたノエルは、三児の父として丸くなった。メディアに出るたびオアシス再結成について問われては否定する日々を送っているが、解散は後悔していないようだ。「オアシス最後のツアーは本当に酷かった。誰も幸せじゃなかった」「人生は一度きりだ。不幸な状態でいたら、貴重なものを無駄にするよ」。

 英国音楽界の「ご意見番」として、毒舌キャラも健在だ。エド・シーランやテイラー・スウィフトといった売れっ子について聞かれてはこきおろすやりとりが定番化している。取材した記者によると、大半の罵倒がサービス精神からくるジョークだが、ただ一人、弟のリアムに対しての怒気だけは本物なのだそうだ。

 解散後、兄弟はほとんど会わなくなった。オアシスの再結成を望んでいるリアムは、たびたびSNSで兄を罵っていたものの、2019年にはノエルの妻(当時)に対する脅迫的なメッセージをノエルの娘に送るという騒動を起こし、亀裂をより深めた。いっとき、リアムの息子がノエルの娘を口撃するなど、対立が次世代に継承されたほどだ。

 現在ノエルは、バンド、ノエル・ギャラガーズ・ハイ・フライング・バーズとして活動中。売れっ子になってしまったオアシスでは作れなかった自由で実験的な作風を楽しんでいるという。2023年作『Council Skies』収録「Pretty Boy」リミックスでは、ザ・スミスのジョニー・マー、ザ・キュアーのロバート・スミスという伝説トリオコラボを成し遂げた。また、かつての天敵、ブラーのデーモン・アルバーンとも和解し、デーモンのバンド、ゴリラズの楽曲「We Got the Power」にて共演を果たしている。

 アーティストとしての現在が充実しているぶん、再結成する気は相変わらずないようだが、キャリア一番の誇りであるオアシスを嫌いになったことは一度もないという。現に、今でもコンサート、とりわけ音楽フェスにおいて、オアシスの曲を演奏しつづけている

 デビューから30年経っても、このバンドのアンセムは「我々みんなの音楽」でありつづけているのだ。フジロックでも、合唱が起こることはまちがいない。

2024.07.28(日)
文=辰巳JUNK