「おバカタレント」は日本でも人気だが、その世界一はパリス・ヒルトンだろう。

 1981年、ヒルトン・ホテル一族の令嬢として生まれたパリスは、20歳のころにはニューヨーク有数のパーティーガールになっていた。パパラッチに写真を撮らせ、ときには自らマネージャーのふりをしたメール対応までして知名度をあげていったという。

 キャラを決定づけたのが、2003年にはじまったテレビ番組『シンプル・ライフ』。お嬢様たるパリスとその親友ニコール・リッチーに庶民の仕事や生活をさせるリアリティーショーだ。料理を頼まれてベーコンにアイロンをかけたりする世間知らずっぷりを披露したパリスは、みごと「おバカなブロンド」としてブレイクを果たした。

「もっとも過大評価されている人物」としてギネス認定

 2000年代のパリス・ヒルトンのトレードマークは、ド派手なピンク。ジューシークチュールのジャージやサマンサタバサのバッグなど、流行らせたファッションアイテムは数えきれない。愛犬のチワワに人間が住めるほど巨大な犬小屋を与えるなど、豪快なお金持ちキャラとしても話題をふりまいた。

 もちろん、アンチも多かった。2006年には「Googleでもっとも検索された人物」の栄誉に輝くと同時に「もっとも過大評価されている人物」としてギネス認定されている。歌手や俳優と異なり「裕福な美人というだけで有名になった」低俗な存在とする向きが強かったのだ。

 しかし、いくら叩かれようとキャラを貫いたパリスは、みずからの名を冠した香水やアパレルによって推定3億ドル(約440億円)もの資産を築い てみせた。この「影響力ベースのセルフブランディング」商法は、今日のSNSインフルエンサービジネスの基盤だと評されている。

2023.09.24(日)
文=辰巳JUNK