リベンジポルノ被害により、性への恐怖心も

 さらに、『シンプル・ライフ』の放送直前、元恋人に性行為の録画映像を公開されるリベンジポルノの被害に遭ったことで、性的なことへの恐怖心が高まった。スーパーアイドルやギリシャの海運王と浮き名を流すセクシーアイコンとして知られながら、他者に性的欲求を抱かないアセクシャルを自認していたという。キス以上の行為を怖がったため、歴代の彼氏たちはみな浮気して去っていった。

「おバカなブロンド」役にのめりこみすぎたことを認めるパリスだが、その仮面は、生き抜く強さも与えてくれたとも回想している。実業家と結婚して40代の母親となった現在は、おなじみのキャラクターを演じる「パフォーマンスアーティスト」として活動中だ。

 告白は世間に大きな衝撃を与えたが、彼女はそこで終わらせなかった。ドキュメンタリーの制作過程で自分のような施設内虐待児童が大勢いると知り、政治活動をはじめたのだ。議会証言では、自身のタレントとしてのイメージを活用し、問題の大きさを訴えた。

「(超富裕層の家庭に生まれた)パリス・ヒルトンですらそんな酷い目に遭ったのなら、里親制度下にある貧しい子どもや孤児たちは、どれほどの被害を受けているのでしょう?」 

 彼女が活動をはじめてから、3年で8つもの州の児童虐待関連法が改正されている。

 仮面をかぶりつづけてきたパリス・ヒルトンは、ついに、なりたかった自分になれたのかもしれない。「権利活動をやっているときが、一番強い自分でいられる。子どもの頃いてほしかったヒーローになれるから」。

2023.09.24(日)
文=辰巳JUNK