生きるか、死ぬかという状況におかれたら
――『ボクの穴、彼の穴。W』への出演が窪塚さんにとって初舞台となりますが、オファーがきたときはどんな気持ちでしたか?
初めて聞いたときは“ちょっとごめんなさい、できないです”って思いました(笑)。初舞台でふたり芝居…自分には担えないんじゃないか、などネガティブな考えばかりになってしまいました。
最後に演出のノゾエ(征爾)さんと喫茶店でお話をさせていただきました。舞台の稽古についてや自分の心情まで、僕と同じ目線で寄り添って一緒に考えてくださって…それで決意しました。
――何が出演の決め手となったのでしょうか?
脚本はもちろんですが、舞台に立つ自分を想像した感覚として、きっと面白くなるだろうと思ったからです。さらにノゾエさんの演出は僕の中では特別感があって好きだったので、その演出の中に自分がいるのを想像するだけで興奮しました。
――脚本を読んだ印象は?
台詞に現代的な要素もあったので、僕たちの世代にも想像しやすい世界が描かれていました。この作品は2つの穴にそれぞれが入っているボクと彼の物語。観客の皆さんからは舞台にいる2人が見えますが、ボクたちには相手が見えません。生きるか、死ぬかという状況におかれたら、それぞれが自分自身と対話をするのだろうと思いました。
それまでの自分になかった視点をこの作品を通して知り、戦争に対する見方や捉え方も変わり、演じることで俳優としてもさらに大きな知恵を得られるのではないかと思っています。
2024.08.20(火)
文=山下シオン
写真=佐藤 亘
ヘア&メイク=大和田一美(APREA)
スタイリスト=上野健太郎