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 “漫画の神様”手塚治虫の代表作にしてライフワークとなった不朽の名作「火の鳥」。その全12編のうち、地球と宇宙の未来を描いた「望郷編」が初のアニメーション映画化を果たした。地球からはるか遠く、生物のいない惑星・エデン17に逃亡してきたロミとジョージ。「火の鳥 エデンの花」で窪塚さんの演じたジョージは、「勢い余ってこんなところまで来てしまった」という若さ溢れるキャラクターだ。

 手塚治虫が「火の鳥」のシリーズを描き始めたのは20代の頃だったそう。40代になって初めて手塚作品に関わった窪塚さんは、自分の未来についての“戦い方”を再確認したという。

「『火の鳥』は、手塚先生が30年以上にわたって描いた作品で、最初に古代を描いて、次に黎明期、未来編と繋がり、一旦、火の鳥が見守る生命の歴史の、全体の流れが出来上がってから、また古代や未来のエピソードが足されていったと聞いています。後半は、自分が死ぬ時間を設定した上で描き進めていったそうで、まさに人生を捧げて描いた漫画です。

 僕も、『火の鳥』シリーズは子供の頃に読んでいましたが、今回、声のオファーをいただいて再読してみたら、こんなにも『宇宙』や『命』の理(ことわり)を真摯に描いていたことに驚いたし、心が震えました。これはもう漫画家の仕事じゃなくて、聖職者というかメッセンジャーというか……。今このタイミングで手塚先生の作品を再読したことは、神様が後世に何を残したかったのか――その真意を汲み取り直す、いいきっかけになりました」

 普段からSDGsなどにも積極的に取り組んでいる窪塚さんは、20代の頃から、世の中を憂える発言を繰り返していた。地球環境に対する危機感は今も変わらず持ち続けているけれど、20代の頃と今とでは、“ヒーロー”の捉え方に大きな違いがあるようだ。

2023.11.02(木)
文=菊地陽子
撮影=平松市聖
ヘアメイク=佐藤修司(Botanica make hair)