ロミを演じて考えた、宮沢りえ流「自然」とのかかわり方

 “漫画の神様”手塚治虫のライフワークともなった超大作『火の鳥』全12編のうち、地球と宇宙の未来を描いた『望郷編』がついに初のアニメーション化。映画『火の鳥 エデンの花』として、2023年11月3日(金)から全国公開中です。

 『鉄コン筋クリート』などで知られるSTUDIO4℃がアニメーション制作を手がけた本作は、地球から遠く離れた辺境の惑星エデンに降り立った女性ロミの人生を描く、壮大な愛と冒険の物語。主人公ロミを演じた宮沢りえさんに、『火の鳥 エデンの花』の魅力や、本作から感じた“生きること”への考え方を聞きました。

──まずは、オファーが来た時の印象を教えてください。

 企画書の表紙を見ただけで、「わっ手塚治虫さんだ! 絶対やりたい!」と思いました(笑)。手塚治虫さんは世代を超えて愛される偉大な存在ですし、私も小さい頃、テレビアニメ『鉄腕アトム』や『リボンの騎士』を観ていて。『リボンの騎士』デザインの自転車にも乗っていたんです(笑)。『火の鳥』をアニメ化すると聞いたとき、頭の中に想像がバーっと広がって。でも、出来上がった映像はもう、自分の想像を遥かに超えたものでした。参加できてよかったなあと思います。

──最初に台本を読んだ時は、どんな印象を持ちましたか?

 登場人物それぞれのキャラクターが立っていて。「ロミを演じるんだ」と思って読んでいたのですが、他のキャラクターにもすごく引き込まれました。ロミの女性として、母親としての思いや、なぜ地球を離れていったのか、そしてなぜまた地球に戻りたいのか。そういった気持ちは、台本を読んで100%理解できたわけではありませんでした。

 でも、映像を観ながら声を録音していくうちに、ロミの表情や肉体の中に自分が投影されていって。ロミに引っ張られて声を入れた、という感じがすごくします。ロミは、何もない惑星に自分の愛する人とたどり着いて、そこで生まれた子供のために、コールドスリープで自分の命を伸ばすという選択をして。目を覚ましたら、その惑星にはエデン17という素晴らしい街ができているんだけど、そこは1,300年後の世界で自分の子供はいないって……なんとも言えない切なさですよね。

──自分の子供の消息について、「1,200年前に寿命を全うした」と聞かされる気持ちは計り知れないですよね。

 そうですね……だから、演じる時に想像する感情も、だいぶ飛躍しなければならなくて。これだけの冒険をする女性を声だけで表現するのは、エネルギーが必要でした。声優の方たちの才能は、やっぱりすごいなと。でも、宇宙を旅する冒険のシーンは、演じていてとても高揚したし、楽しかったですね。

2023.11.09(木)
文=石橋果奈
撮影=平松市聖
ヘアメイク=黒田啓蔵
スタイリスト=後藤仁子