「お日様の下」「動植物」「映画館」という3つの豊かな体験を娘に
──宮沢さんのInstagramを拝見していると、地球の自然や四季をしっかりと感じながら生きていらっしゃる印象があります。
自然との触れ合いは、大切にしていますね。私自身が子供の頃は携帯電話がなかったので、「どうやってこの気持ちを相手に伝えよう」と考えることだとか、自分がどれだけ想像力を膨らますことができていたかを、世代的に覚えていて。今はスマートフォンでいろんなことができる時代だけど、これからもっと便利になっていった時に、人はどんなふうに変化していくんだろうって、期待と不安があるんです。人が人らしく、AIにも敵わないものを持ち続けるには、どういうふうに生きていけばいいんだろうって。
その中で私は、ときおり娘と、デジタルなものから離れてみる時間を共有しています。そういう不便な時間から教わることがあるし、考える力が養えると思うんです。
──具体的には、どのような時間を過ごされていますか?
そんなに意識的にではないですけど、休みの日に自然の中に行ったり……私はお日様をあまり浴びてはいけない職業ではあるんですけど(笑)。でも、お日様の下でやることの方が断然、人間として気持ちがいいんですよね。
あとは小さなことですけど、家族で植物を育てています。今、子供の想像力が育つ前に、いろんな情報が飛び込んでくるので、そのことへの不安みたいなものがずっとあるんです。YouTubeとかTikTokとか……そういうことを批判はしないけれど、やっぱりそれだけじゃないと思っていて。何もないゼロの状態から何かを想像したり考えたりする場所がどんどん減ってきていると思うんです。だから、うちには動物もいっぱいいるんですけど、植物や動物との関わりの中で生まれる愛情だったり、自然の中で遊ぶものを見つけることだったり、そういうものを大事にして生きていってほしいなあって……でも、なかなか誘惑が多すぎますよね(笑)。
──『火の鳥 エデンの花』はまさに、本当に大事なことは何かを考えるきっかけになりそうな映画ですよね。
そうですよね。映画館も、意外とデジタルなものを手放せる時間ですし、あの時間が私はとても好きで。携帯をオフにして、日常をできるだけ遮断して作品に集中する時間っていうのは、自分自身も必要だなと思うし、娘にもそうであってほしいなと思うので、よく映画館に誘いますね。
どんな映画ももちろんそうですけど、この『火の鳥』はぜひ大画面で、いいスピーカーで、全身で浴びてほしい映画ですね。映画を観たあと「あれはどういう意味だったんだろう」とか、話のテーマをいっぱいもらえる映画だとも思うので。もちろんお1人で行って世界観に浸るのもいいですけど、ぜひ手塚治虫さんが伝えてくれたメッセージについて、誰かと語り合ってほしいなと思います。
宮沢りえ(みやざわ・りえ)
1973年生まれ。11歳でモデルデビュー。1988年公開の初主演映画『ぼくらの七日間戦争』で日本アカデミー賞新人賞を受賞。近年の出演作に舞台『泥人魚』『アンナ・カレーニナ』、映画『決戦は日曜日』『アイ・アム まきもと』『月』、テレビドラマ『真犯人フラグ』『女系家族』、『鎌倉殿の13人』など。
映画『火の鳥 エデンの花』
2023年11月3日(金)全国ロードショー
手塚治虫の名作漫画「火の鳥」全12編のうち、地球と宇宙の未来を描いた「望郷編」をアニメ映画化。
キャスト:宮沢りえ 窪塚洋介 吉田帆乃華 イッセー尾形
監督:西見祥示郎
音楽:村松崇継
原作:手塚治虫「火の鳥」(望郷編)
プロデューサー:田中栄子
アニメーション制作:STUDIO4℃
配給:ハピネットファントム・スタジオ
https://happinet-phantom.com/hinotori-eden/
衣装クレジット
ジャケット 590,000円、Tシャツ 175,000円、スカート 410,000円(参考価格)、イヤリング 120,000円、シューズ 180,000円/すべてDIOR(クリスチャン ディオール/フリーダイヤル 0120-02-1947)
2023.11.09(木)
文=石橋果奈
撮影=平松市聖
ヘアメイク=黒田啓蔵
スタイリスト=後藤仁子