『リリイ・シュシュのすべて』以来、岩井俊二監督と音楽プロデューサーの小林武史がタッグを組んだ音楽映画『キリエのうた』。

 4人の男女の運命が交錯する本作で、路上ミュージシャンのキリエ(路花)を演じるのは、今年6月にBiSHが解散をしたばかりのアイナ・ジ・エンドさん。新たな一歩を踏み歩みだした彼女が、“宝物みたいな経験”を振り返ってくれました。


どうしても岩井さんの世界に飛び込みたい!

――今回、出演オファーが来たときの率直な感想は?

 2021年の夏の終わりぐらいだったと思うんですが、何の前触れもなく、岩井俊二さんから連絡があったんです。それまで、一度もお会いしたこともなく、私はただのファンでしかなかったので、すごく動揺してしまいました。

 そのとき、すでにBiSHの解散は決まっていましたし、22年の夏にはミュージカル「ジャニス」の主演も決まっていたので、「これ以上、ソロワークを増やせない!」と思っていたんですけど、「どうしても岩井さんの世界に飛び込みたい」という気持ちの方が強く、お受けさせていただきました。

――ファンだった岩井監督作との出会いは?

 BiSHになった後、友だちに『PiCNiC』を勧められて観たのですが、その世界観がめっちゃ好きで、着てる衣装もめっちゃ可愛くて、感性を突かれるような刺激的な作品に思えたんです。

 それで「この映画の監督さん誰やろ?」と、インターネットで調べました。そしたら、前に観ていた『スワロウテイル』の監督さんでもあったことが分かって、ちょっと驚きました。

――アイナさんは、もともと映画好きだったということですね。

 私というより、母が映画好きで、毎日のように焼き鳥をつまみにビールを飲みながら、ホラー映画ばっか観ていたんですよ。私が学校から帰ってくると、常に映画が流れているような状況だったので、日常生活の一部のような存在でした。

 上京する直前は一緒に『ソウ』シリーズを観ていましたが(笑)、『PiCNiC』を観たときのように、わざわざ監督の名前を調べるようなことはありませんでしたね。

2023.10.27(金)
文=くれい響
撮影=杉山拓也
スタイリング=菅沼愛(TRON)
ヘアメイク=KATO(TRON)