映画のヒロインなんて、無縁の存在だと思っていた
――とはいえ、映画のヒロインを演じるということに迷いはありませんでしたか?
学校のクラスで、前の席からプリントが回ってくるじゃないですか。そのときに、男子から「お前、今日もおもろい顔してるな」と言われるような女子だったし、「ミュージカル『アニー』のオーディションを受けたい!」を言ったら、父に「顔で落ちるからやめろ」と言われたし、私、容姿にはかなり自信がなかったんですよ。
そのぶん、歌とダンスを頑張るしかないと思ってきた人間なので、顔面偏差値が高い人たちが出るような映画のヒロインなんて、無縁の存在だと思っていたんです。だから未だに信じられないです。
――岩井監督の作品といえば、『スワロウテイル』でCharaさんが演じられたグリコや『リリイ・シュシュのすべて』でSalyuさんが演じられたリリイのように、ミュージシャンの方が歌姫役を演じられてきました。
みなさん可愛いくて、美人なのに、アイナ・ジ・エンドめっちゃダメです(笑)。
でも、自分には自信なく、ダークゾーンが生まれたことで、引き出しが増えて、歌詞が書けて、振り付けも作れたし、人の痛みが分かるようになったし、その経験は宝物だと思っているんです。
だからこそ、『キリエのうた』で上手く声が出せない、歌でしか表現できない女の子を演じることができたと思いますし、私の幼少期とどこか重なりましたし、実際私も大阪から上京してきたとき、キリエ(路花)と同じように路上で歌っていたんですよ。
――実際に、岩井監督に会われたときの印象や岩井組の印象は?
岩井さんは懐が広い方で、どしっと構えてくださっていて、『PiCNiC』の裏話もしてくださいました。岩井組のみなさんも、本当に自由な方ばかりで、そこに身を置いていると、怖いという気持ちよりは、もっと自然体でいいんだと思わせてくれましたし、息がしやすかったです。
ただ、クランクインしたときには台本がまだ完成してなくて、セリフがどんどん増えていったことには驚きました(笑)。
2023.10.27(金)
文=くれい響
撮影=杉山拓也
スタイリング=菅沼愛(TRON)
ヘアメイク=KATO(TRON)