自分が知らない世界観を覗くことで、自分を客観視できる

――今年、BiSHとして東京ドームのステージに立ち、俳優として映画のヒロインを務めるという夢を叶えたアイナさんが、常に大切にしてきたことは?

 今の時代に合っているか分かりませんが、前のめりになる時期も大切だし、耐える時期も大切だということですかね。

 「上手くいかない!」と悩んでいた時期があったんですけれど、それは後々、宝物のような経験になりました。かといって、ずっと逃げているだけじゃダメで、前のめりになって、自分から自分に刺激を与えるのも必要。オーディションを受けまくって、落ちて、凹みに行くじゃないですが、失敗することを恐れず、前のめりになる。これをしっかり経験しないと、夢が叶っても嬉しくないと思うんですよ。

 一回しっかり凹むと、頑張るしかなくなるんで、そこが前のめりになるタイミングだと思いますね。

――ちなみに、美容や健康に気を付けていることは?

 ご飯に関しては、自炊を心がけています。カップラーメンを食べ続けたり、気を緩めると、すぐに肌に出てしまうので、極力玄米と白米を合わせたものを研いで、ちゃんと炊いています。あと、お味噌汁とか納豆、キムチとか発酵したものを摂るように心がけています。

 料理を始めて、早3年になりますが、今では豚肉を焼けていることは、革命に近いかと思います(笑)。

――最後に、CREA秋号は「偏愛の京都」特集になっていますが、ご自身にとっての偏愛アイテムを教えてください。

 匂いフェチなので、犬の肉球を嗅ぐのが好きですし、いい匂いのする人がいたら好きになっちゃいますし、必ず香水を持ち歩いています。あと、読書をすること。最近ではBiSHの元メンバーのモモコグミカンパニーが書いた「悪魔のコーラス」を読んだんですけど、自分が知らない世界観を覗くことで、自分を客観視できると思うんです。だから、辛いときには小説を読むようにしています。

 根本、太宰治が好きなんですが、ちょっと官能描写がある女性作家の作品を読むのが好きです。岩井さんが書かれた小説版「キリエのうた」も読んだんですが、自分が書いた歌詞も入っているので、そこまで客観的にはなれず、ちょっと変な感覚になってしまいました(笑)。

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アイナ・ジ・エンド

2015年“楽器を持たないパンクバンド” BiSHのメンバーとして始動。翌年、メジャーデビュー。ほぼ全曲の振付も担当。21年には、全曲作詞・作曲の1stソロアルバム「THE END」をリリースし、ソロ活動を本格化させる。23年6月に惜しまれながらもBiSHは解散し、現在はソロとして活動中。22年、日本初上演となるミュージカル「ジャニス」では主演のジャニス・ジョプリン役を務め、多彩な才能を発揮し続けている。10月18日にはKyrie名義でアルバム『DEBUT』をリリース。

映画『キリエのうた』
2023年10月13日(金)全国公開

路上ミュージシャンのキリエ(アイナ・ジ・エンド)は、歌でしか声を出すことができない。ある夜、過去と名前を捨てたイッコ(広瀬すず)は、キリエの歌を聴きマネージャーを買って出る。さらに姿を消したフィアンセを探し続ける青年・夏彦(松村北斗)や、人の傷に寄り添う小学校の教師・風美(黒木華)の人生が交差する運命的な男女4人の奏でる愛の物語
https://kyrie-movie.com/

2023.10.27(金)
文=くれい響
撮影=杉山拓也
スタイリング=菅沼愛(TRON)
ヘアメイク=KATO(TRON)