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どん底の時期があったから、今幸せでいられる

 「火の鳥 エデンの花」という作品は、まさに一人一人の中にある「ボブ・マーリー」や「ジョン・レノン」、ひいては、「手塚治虫」を目覚めさせてくれるエンタメだ。

「この映画を観ることで、そういう、いい循環がどんどん起こると思う。僕も20代の頃は、ネガティブなことだったり、不安とか不満とかを散々煽ったけど(笑)、でも今は、そっちじゃないところに陣地を取ってる。それは、やっぱりいろんなネガティヴなことを経験しなかったらわかんなかったんですよ」

 不満や不安を煽っていたというが、20代の窪塚さんは、まさに時代の寵児のような新しさと迫力があった。でも当の本人は、「いろいろ無責任だったし、周りの大人に甘えている部分も多かった」と当時を振り返る。

「いろんな尖った発言をすることを、いいふうに捉えてくれた人もいたけど、当時の2ちゃんねるとかではボコボコに叩かれたし(笑)。でも、今となってはマンションから落っこったことも、ネットでボコボコにされたことも、事象としてはネガティブなんだけど、自分の経験としては、ああいうことがあって、本当によかったなと心底思えるんですよ。そういうどん底の時期があったから、今幸せでいられてるんだと思う。

 今の若い世代は、それぞれ生きづらさや閉塞感を感じているけど、それって、俺らの時代とはまた違う生きづらさで。『みんなが望んでいる私でいなきゃ』みたいな人が増えているような気がします。でも、周りの期待に応えるために苦しくなるのって、本末転倒もいいところだから。

 手塚先生が描いていた漫画は、ほとんどが生き方とか死に方の話だと思うんだけど、結局、その『誰のために生きるのか』『何のために生きるのか』っていう問いの答えは、自分の中にしかないものだから。自分じゃない外の部分に答えを求めた瞬間に、いろんな不具合が生じて、悪循環が生まれると思うんです。すべては自分のため、地球のためと割り切って、すべての行動に自分で責任を持てたら、いい循環が生まれて、対人関係が改善することはもちろん、運気が上がって、開運もしますよ(笑)。

 『火の鳥』が教えてくれるのは、そんな魔法みたいな『自分のあり方』なんだと思います」

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窪塚洋介(くぼづか・ようすけ)

1979年生まれ。神奈川県出身。1995年「金田一少年の事件簿」で俳優デビュー。2000年の「池袋ウエストゲートパーク」のキング役で注目される。01年、映画「GO」で、第25回日本アカデミー賞新人賞と、史上最年少での最優秀主演男優賞を受賞。17年「沈黙 サイレンス」でハリウッドデビューを果たす。他に、BBC×Netflix London制作連続ドラマ「Giri /Haji」でもメインキャストを務めた。今年公開された「Sin Clock」で18年ぶりに主演を務めた。

映画『火の鳥 エデンの花』11月3日(金)全国ロードショー

地球から遠く離れた辺境の惑星・エデン17に降り立ったロミと恋人のジョージ。2人はこの星を新天地にしようと誓うが、ジョージは事故で命を落としてしまう。ロミは、息子のカインとAIロボットと共にサバイバル生活を送るが、カインの未来のため、彼が大人になるまでコールドスリープに入ることを決意する。機械の故障で、1300年後に目覚めたロミは、自分たちの子孫が巨大な町を築いていたことを知る。女王となったロミだが、いつしか地球へ帰りたいと思うようになり、心優しい少年コムと共に、故郷を探す旅に出る。
制作は「海獣の子供」のスタジオ4℃、監督に、「鉄コン筋クリート」「バッドマン ゴッサムナイト」の西見祥示郎、キャラクターデザインは、「サマーウォーズ」「バケモノの子」の西田達三。美術監督に、「漁港の肉子ちゃん」の木村真二。音楽に「思い出のマーニー」の村松崇継。現代最高のクリエイターが結集し、不朽の名作を映画化。
11月3日(金)全国ロードショー。

キャスト:宮沢りえ 窪塚洋介 吉田帆乃華 イッセー尾形
監督:西見祥示郎
音楽:村松崇継
原作:手塚治虫「火の鳥」(望郷編)
プロデューサー:田中栄子
アニメーション制作:STUDIO4℃
配給:ハピネットファントム・スタジオ
https://happinet-phantom.com/hinotori-eden/

次の話を読む窪塚洋介がキングになるために 欠かせなかった「あの2時間」とは?

2023.11.02(木)
文=菊地陽子
撮影=平松市聖
ヘアメイク=佐藤修司(Botanica make hair)