全国の書店員さんから熱狂的な支持をいただいている、森バジルさん新刊『なんで死体がスタジオに!?』が、いよいよ6月26日に発売となります!
一行目からノンストップで進行するバラエティ・ミステリを、ぜひ試しに読んでいってください!
★あらすじ
バラエティプロデューサー・幸良涙花は、がけっぷち、である。
筋金入りのテレビっ子だが、不運体質(?)のせいか失敗に失敗を重ね、「次がダメなら制作を外す」と宣告されている。
進退をかけた「次」の番組は、その名も「ゴシップ人狼」。
出演者が持ち寄ったゴシップについて語りながら、紛れ込んでいる嘘つきを推理する、という人気トーク番組だ。奮闘する幸良が、本番直前に出会ったのは……
「大御所俳優・勇崎恭吾の死体」だった!
生放送開始まであと20分。果たして幸良は特番を乗り切れるのか!?
そして、この事件の犯人は?
1章 この番組には刺激の強い表現が含まれています。
「いまどこにいるか分からない、と」
電話口で告げられた情報を、ばかのように繰り返す。
「連絡も、取れないと」
心臓と全身の毛穴がきゅっと引き締まる。この業界で十年以上働いていると、起きているトラブルが一発耐えて反撃に転じられるくらいの浅傷なのかプロデューサー生命まで届きうる重傷なのかの判断を、匂いで嗅ぎ分けることくらいはできるようになる。そんな私の勘が言ってる――こいつは、えぐいダメージになりうる。
生放送特番の出演者が、本番四十分前になってもまだ来ていない。連絡も取れない。それが今私に襲いかかっているトラブルだった。生放送といっても、YouTubeやインスタライブの配信ではない。地上波全国二十八局ネット、ゴールデンタイムの生放送特番である。
「幸良さん、顔色悪いっすよ。大丈夫ですか」
次郎丸くんが心配そうにそう声をかけてくれた。ちなみに次郎丸は苗字で、下の名は夕弥。次郎丸夕弥、芸名と言われた方が納得できそうなゴツい名前だが彼はスタッフ側。制作会社所属のチーフADである。ADらしくバミテを肩紐に通したADバッグを携え、ロンTとジャージ素材のズボンというゆるい服装だが、それでいて爽やかさと抜け感を感じさせる雰囲気がある。まだ二年目くらいの頃から、「ADってなぜかお洒落だったり爽やかだったりする方がDに怒られづらいんですよ」と言っていた。デキる子なのだ。
2024.07.07(日)