この記事の連載
- 横浜トリエンナーレ #1
- 横浜トリエンナーレ #2
無料スポットも注目! 馬車道エリア旧第一銀行横浜支店・BankART KAIKO会場
馬車道エリアにある旧第一銀行横浜支店会場・BankART KAIKO会場は、第8回横浜トリエンナーレのテーマ「野草:いま、ここで生きてる」の「すべての河」の章を展示。日常の暮らしの中で社会を変えるきっかけをもたらそうとする人たちの動きなどを表します。
◆革命の先のある世界をテーマとする旧第一銀行横浜支店会場
旧第一銀行横浜支店会場の1階は「革命の先のある世界」というテーマにもとづいていて、他の会場よりも主張がストレート。2000年代から現在に至るまで原発問題や高円寺再開発反対問題など社会問題に注力し、そういった日々の出来事を4コママンガで紹介するなど、革命後の世界のイメージを「いま、ここで」実現させていく姿を象徴的に表現しています。
◆プック・フェルカーダ@旧第一銀行横浜支店会場3階
3階は、ベルリン在住のアーティストが妊娠中に制作したインスタレーションに注目。妊娠・出産というプライベートな出来事と世界規模で起こっている自然環境のことを重ねて表現した作品は、足を止めて最後まで見入ってしまいたくなるストーリーでした。
◆SIDE CORE@旧第一銀行横浜支店会場@BankART KAIKO会場の外
今から100年前に執筆された魯迅の『野草』を出発点とした今回のトリエンナーレ。その会場となった旧第一銀行横浜支店は、関東大震災復興期の約100年前、1929年に建てられた建物で、魯迅が生きていた時代と重なります。資本主義社会を批判する生き方を表現した作品を資本主義の象徴ともいえる会場で展示する対比のような見せ方に面白さを感じます。
SIDE CORE(サイドコア)の映像作品は旧第一銀行横浜支店の建物の外側に大きく映し出されています。
BankART KAIKOの周辺は、約100年前の大正時代、海外輸出のため全国から絹が集められた場所でした。現在の北仲通地区一帯に大規模な生糸検査所関連施設が並んでいた創建当初の歴史的景観の一部を再現した複合施設内にあるのが「BankART KAIKO」。今では、横浜を代表するオルタナティヴスペースとして国内外に広く知られています。
元は横浜生糸検査所の倉庫だったこの地下に見えるのはSIDE COREによる、ガラスに絵を描く人を写した映像作品。まるで足元の地下空間に人がいて、何かを伝えようと絵を描き続けているかのよう。下が透明になっていて少しのスリルも味わえます。
SIDE COREの作品はいずれも建物の外にあるので、街歩きのついでに鑑賞できます。
駅近くにも! 通りすがりに見つかる期間限定アート
◆石内都@みなとみらい線馬車道駅コンコース
馬車道、クイーンズスクエア横浜、元町・中華街駅連絡通路など人々が行き交う通路などの無料空間に作品が展示されているのも、本展のユニークな試みのひとつ。
みなとみらい線馬車道駅コンコースにある石内都「絹の夢-silk threaded memories」は、第8回横浜トリエンナーレ組織委員会とBankART1929によるプログラム。馬車道駅を使って旧第一銀行横浜支店会場などに行くときにチェックしてほしい作品です。
絹にゆかりのある馬車道に石内都「絹の夢」から紡がれた空間を立ち現します。こちらは、群馬県の製糸工場の写真と絣(かすり)の着物地の写真で構成されたインスタレーション作品で、中を通り抜けることもできます。カラフルな織物は、ヨーロッパの前衛的な柄を取り入れた斬新なデザインで、日本の近代女性が愛用していた普段着の着物なのだとか。カラフルな織物のパネルは、思わず立ち止まってじっくりと観てみたくなります。
◆チュン・イン・レインボー・チャン@元町・中華街駅連絡通路
元町・中華街駅連絡通路に展示しているのはチュン・イン・レインボー・チャンによる「生果文(果物の詩)No. 2」。香港の先住民族のルーツをもつ彼女は、自身の民族に属する女性たちの文化を取り戻そうと、高齢の女性たちを訪ね、失われた伝統の復活に奮闘します。元町・中華街駅連絡通路には、結婚式で花嫁が実家との別れを嘆く様子を果物にたとえた詩が展示されています。展示のQRコードを読み込むと作家自身が弾き語りした歌を聴くこともできます。
》#2 この春、横浜の街がアートに染まる! 新高島・黄金町・山下公園散策へにつづく
第8回横浜トリエンナーレ「野草:いま、ここで生きてる」
2024年3月15日(金)~6月9日(日)
https://www.yokohamatriennale.jp/2024/
2024.05.03(金)
文=桐生奈奈子
写真=佐藤 亘