まずはみかんの争奪戦から
人々が集まると、いよいよ一連の神事が始まった。雪で作られたカマクラ形の祭壇の前で、神主さんが集まった人々の無病息災を祈る。
挨拶が終わるや、地元の人たちが各自ポケットからごそごそとビニール袋を取り出し始め、地元の小学生たちも「始まるよ!」とドドドッと前方に押し寄せてきた。
「すみ塗りが始まるんですか?」とそばにいた方に尋ねると、「それは後! 今は福みかん撒き。みかんが飛んでくるよ」と教えてくれた。本日の主役である「むこ」の岡田文朗さんと妻の優美さん、もう一組の佐藤貴紀さんと妻の史織さんに加えて、集落の年男年女も一緒に段ボール箱に入っているみかんを掴み、「それ~!」「うりゃ~!」と投げ始めた。
雨あられとみかんが飛んでくるし、目の前のおばあさんがみかんを掴んだままひっくり返って助けを求めるので撮影どころではない。てんやわんやの大騒ぎをしているうちに「福みかん撒き」はあっさり終了した。「福」と書いてあるみかんをとった人は福袋をもらえるらしい。みかんを手に集落の人たちがほくほくして嬉しそうなので、みかんは拾えずとも福は十分、拾えた気がした。
2024.03.30(土)
文・撮影=白石あづさ