さきほどご紹介した『魔術師の匣』評で、北上次郎氏が苦笑まじりに「物語には直接の関係がない」と記していた登場人物の私的エピソードも、本作では物語のテーマと有機的に結びつけられています。そのテーマとは、「親子関係」です。

 ヴィンセントと子供たちの挿話は前作でもフォーカスされていましたが、ユーリアとペーデルは幼い子の育児中、アーダムには母親との、ルーベンにも彼なりの、親子の問題が立ちはだかります。ミーナは母として娘との、そして娘として母との、難しい関係に取り組まなければなりません。そして今回の事件の原因もまた、その問題に直結してゆきます。

 果たして“ミステリーの女王”レックバリと、“達人メンタリスト”フェキセウスがどのような役割分担で執筆しているのかはわかりませんが、本作もまた、レックバリらしい「キャラもの」の楽しさが横溢した、サスペンスフルな作品になっています。

 さてこのミーナ&ヴィンセント・シリーズですが、当初から三部作構想であるといわれていました。『魔術師の匣(原題Box)』、『罪人たちの暗号(原題Kult)』につづく完結編は、すでに原稿が完成しています。Mirageと題された第三作では、衝撃的な結末が待ち受けているとも言われています。こちらも文春文庫での刊行を予定しています。

罪人たちの暗号 上(文春文庫 レ 6-3)

定価 1,375円(税込)
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罪人たちの暗号 下(文春文庫 レ 6-4)

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2024.03.08(金)
文=文春文庫編集部